2017年 02月 26日

(1)北村薫・宮部みゆき 編『名短篇、さらにあり』半分ほど

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 全12篇収録。面白そうなものから先に読んでしまった。

 名前も初めて知った十和田操、すてき! リズムがいい、擬音の
音感がいい、『押入の中の鏡花先生』以外の作品も、読んでみたい。

< 鏡台の前に並んでいるお化粧罎のような小さい格好(かっこう)の
 やつが、びっこを引いて、一日中、けしょけしょと、かあちゃんの
 お尻について歩き廻るので、かあちゃんから「おけしょびんちゃん」
 という名をつけられているのだが、そのかあちゃんのことは、かあ
 ちゃんと呼んで、とうちゃんのことは、とうちんといってふざける。>
(p120)

 "お化粧罎のよう"に小さくて、"けしょけしょと"動き回る、幼い息子。
小鳥のような愛らしさだ。

 擬音ってセンスがいる。
 話が木内昇『笑い三年、泣き三月。』(文春文庫 2014初 J)に横滑り
すると、第一章・第一行、
< 最後に、もんっ、と大きく叫んで汽車が止まった。>(p10)で座礁
して、後が続かない。
 "もんっ"に拒否反応。一文の背後に、作者の"どうだ、決まってるでしょ"
という会心の笑みを視るわ、日本近代文学臭味は感じ取るわ、一行目で
ストップ。
 いつか、気難しくないときに試みよう。

 『名短篇、さらにあり』に戻る。
 久生十蘭『雲の小径』。飛行機に乗り、雲海の中でエクトプラズムの
話になるのだ。すばらしい。
 体質的に苦手で敬遠する内田百閒だが、『とほぼえ』すごい。少しずつ、
少しずつ、話が転調していく間合い!
 ようやく読んだ岩野泡鳴、『ぼんち』。なんだか、関西の男版・岡本かの子
みたような感触。
 好みが偏しているので、永井龍男『出口入口』みたような短篇小説らしい
巧さには、だからどうしたと思ってしまう、日本近代文学痴だ。

 いっそ、幻想と怪奇と奇妙な味だけのアンソロジーにしてくれてたらなあ。


     (北村薫・宮部みゆき 編『名短篇、さらにあり』
     ちくま文庫 2008再 J)

2月28日に続く~

呪 吐爛腐/呪 心臓亜屁/呪 共謀罪=ネオ治安維持法/





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# by byogakudo | 2017-02-26 21:55 | 読書ノート | Comments(0)
2017年 02月 25日

西荻窪・銀盛会館にて「古本屋ツアー・イン・ジャパンの大放出古本市」

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 今日は西荻窪に行くんだ。銀盛会館1Fで今日・明日の2日間
開かれる、「古本屋ツアー・イン・ジャパンの大放出古本市」
に行こうと、数日前から決めていた。

 11am開場と知っていても、出足は相変わらず遅い。バス停・
宮前何丁目かで降りて住宅地を歩き、着いたのが2:30pmころ
だろうか。会場内は潮が一度引いた後の空気がするが、それでも
数名、熱心に平台を覗いている。なつかしい古書展会場の空気
である。わたし(たち)も台に張りつく。

 古書展でも古書店でも他人が目に入らなくなるので、Sの動向は
よく知らないが、彼は単行本の棚をまず見たようだ。
 わたしが身体を深く折り、平台に接触せんばかりに覗き込む__
文庫本の背から15cm辺りまで近づかないとタイトルが読めない__
ので、文庫は後で見ようと思ったのかもしれない。

イスレール・ザングウィル『ボウ町の怪事件』(創元推理文庫 1961年5版 裸本)、
リチャード・マイルス『雨にぬれた舗道』(角川文庫 1970再 裸本)、
アルフレッド・ベスター『虎よ、虎よ!』(ハヤカワ文庫 2008初 J)、
佐々木邦『おてんば娘』(春陽文庫 1968年18刷 J)、
光瀬龍『明治残侠探偵帖』(徳間文庫 1983初 J)、
谷崎潤一郎『美食倶楽部』(ちくま文庫 1989初 帯 J)、
ハーバート・ブリーン『夜の闇のように』(HPB 1957年)、
ノエル・カレフ『その子を殺すな』(創元社 1959年・普及版初)、
邦枝完二『瓦斯燈時代』(朝日文化手帖 1954初)、
畑中章宏『柳田国男と今和次郎』(平凡社新書 2011初 帯 J)、
今和次郎『働く人の家』(相模書房 1947初)、
『[普及版]土方巽全集 1』(河出書房新社 2005年普及版初)、
『土方巽を幻視する』(愛知県文化情報センター 1997年)。

 全13点。平台を覗き込む姿勢は、どうしても古書展に通っていた
ころを思い出させる。著者名とタイトルを書いていると、ホームページ
の新着欄を作っていた時代を想起させる。思わず、本の状態まで書き
そうになる。
 古本屋気(け)は、ほぼ抜けているので、読みたい本、持っていたいもの
しか手にしないけれど、久しぶりに、五反田・古書展1Fでの熱中に近い
状態だった。

 古本屋ツアー・イン・ジャパンの小山さん、どうもありがとう! 
楽しかったです。




呪 吐爛腐/呪 心臓亜屁/呪 共謀罪=ネオ治安維持法/
 





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# by byogakudo | 2017-02-25 21:39 | 雑録 | Comments(0)
2017年 02月 24日

ローレンス・ブロック/阿倍里美 訳『タナーと謎のナチ老人』読了

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 睡眠機能を失った、眠らない/眠れない男、エヴァン・タナーの
冒険活劇、第二弾だ。第一作『怪盗タナーは眠らない』を読んだ
のが2014年7月20日
 時間が経つのは、なんて速いのだろう。ひたすらローレンス・
ブロックを読み続けてやり過ごした、2014年の夏だ。食事の
ときは坐るが、それ以外はソファで横になってブロックを読む
だけ。

 『タナーと謎のナチ老人』は、1966年に原作刊行。タナーは
東西冷戦下の、中部あるいは東ヨーロッパに行く。
 ナチに協力していたスロヴァキア人のコタセック(もう老人だ)
を、プラハの監獄から生きて連れ出し、彼が持つ情報を西側のもの
にする、というのがタナーが頼まれた仕事。

 多言語者であるタナーは、東ヨーロッパの言葉もお手のものだ。
或るときはネオナチ・シンパ、或るときは親イスラエル(これは
本音に近い部分がある)と、時と場合によって異なる思想を口に
して生き延びる。スパイは常に二重スパイ、のセオリー通りに
振舞って生き残る。

< コタセックと一緒にいるときは、熱狂的なナチの信奉者を演じ、
 フェレンツと一緒のときは、自由主義を信奉する反ファシストの
 革命家を演じてきた。私はこれまでを振り返り、自分のいい加減さ
 に強い嫌悪感を覚え、口やかましいお荷物に吐き気を催した。
 そして、ピーセクでの自分の演説__<親独協会>に向けた演説__
 のことを考えた。言葉に意志があるように、あんな台詞(せりふ)が
 自分の口から飛び出すとは。私はあの場で自分に求められる役割を
 演じただけだが、なぜあれほど興奮したのか。
  私は『鏡の国のアリス』の中でチェスの赤の女王がアリスにした
 助言を思い出した。
  「英語で何と言うのかわからなかったら、フランス語で言うことね
 __歩くときはつまさきを外側に向けること__そして、自分が誰か
 ってことを忘れないようにするの!」
  自分が誰かってことを忘れないようにする。これはそれほど簡単な
 ことではなく、時間を追うごとに難しくなっていた。>(p223)
 
 脱獄させた老人・コタセックの持病の一つにカタレプシーがある。
発作が起きると心音も停まり、死体と変わらない。タナーの慢性完全
不眠症といい勝負だが、この症状を利用して、タナーは遂に老人を
リスボンまで連れ帰り、情報を吐き出させる。

 
     (ローレンス・ブロック/阿倍里美 訳『タナーと謎のナチ老人』
     創元推理文庫 2008初 帯 J)



呪 吐爛腐/呪 心臓亜屁/呪 共謀罪=ネオ治安維持法/

 今日の「東京新聞」夕刊・1面の左側に相模原市の障害者施設を
襲った男の精神鑑定結果が出ていた。
 彼は"自己愛性パーソナリティー障害"と診断され、症状の説明が
される。
<成長過程で形作られる人格のゆがみを意味する「人格障害」の
 一種。自分を特別な存在と過度に思い込み、他人に自分を称揚
 するよう強要することもある。>そうで、
 1面・右側の「森友学園」疑惑の記事との関連を思う。安倍晋三も
同じ症状ではないか。

 「森友学園」創立者と、いつ・どこで・どんなきっかけで知り合ったか、
まず、そこを尋ねてから(記憶にないとか言いそうだが)、国会での
森友学園理事長・籠池(かごいけ)泰典の証人喚問は?
 後援会で紹介されたくらいのつき合いで、安倍晋三の名前を冠した
小学校を創立したりするのか?





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# by byogakudo | 2017-02-24 21:45 | 読書ノート | Comments(0)
2017年 02月 23日

(2)ドナルド・E・ウェストレイク/木村仁良 訳『二役は大変!』読了

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~2月22日より続く

 半分強をだらだらと、後半を大急ぎで読了。
 ひとり二役という難問をどうクリアするか。無茶な使命を主人公に
与えた作者・ウェストレイクは、着実に回収漏れなく、余波を鎮めて
終結させる。主人公と関わったあのひとはどうなった?と、読者に
心配させないのは偉いけれど、事態収拾のために三人も殺しちゃって、
いいのかなあ。

 その答えは、主人公は双子の姉妹それぞれと(!)結婚して、お金持ちに
なってしまったので法律からも逃避できる、というもの。そりゃあ、現実
でもそうではあるけれど、このミステリはどんなジャンルなのだろう、コミ
カルなハードボイルド? 冗談で話をつなぐ、ドライなハメット調?
 ハメットの系譜ではあるだろう。

 妻たちを喪い、遺産相続で大金持ちになった主人公、アート・ドッジは、
姉妹が生前、頼んでいた法律事務所の男、ゴードン・オールワージーを
引き続き雇う。

<おれは彼に金を支払える限り、彼を信頼している。
 [略]
 最終的には、おれ独りでは[注・法的処理を]できなかっただろうと
 悟った。それに、オールワージーがいると、なんて簡単なんだろう。
  それに、金というものについて完全には理解していなかったという
 事実がある。金は自分自身の脳や知識を補うための脳と知識を買える。
 おれは自分の生来の機知と、自立のためにやりくりする才能だけで、
 かなりのところまで来た。
 [略] 
 今では、何もしなくてもよいといえる状態にいる。[略] 
 黙認が必要ならば、ハーヴァード法学校で黙認を教えている男を雇う
 ことができる。
  ゴードン・オールワージーがどれほど知っているのか、もしくは
 疑っているのかは知らないが、それは構わない。[略] 
 もし彼がおれを警察に引き渡したら、仕事を失うだろう。[略] 
 彼はおれを警察に引き渡すだろうか? あんたなら、どうだい?
  そう、ゴードン・オールワージーもしないだろう。>(P340-341)

 "Two Much!"という原題がすてき。


     (ドナルド・E・ウェストレイク/木村仁良 訳『二役は大変!』
     ハヤカワ・ミステリアス・プレス文庫 1995初 J)

[同日追記: 
 双子で思い出したが、『十二夜』も読むべきだろうか。]



呪 吐爛腐/呪 心臓亜屁/呪 共謀罪=ネオ治安維持法/
 最高裁第三小法廷(裁判長・大谷剛彦)が、特別抗告を棄却
した。山城博治(沖縄平和運動センター議長)氏の保釈を認め
ないと、決定した。
 安倍晋三がトランプの靴を舐めるように、司法の長である大谷
剛彦が安倍晋三の靴を舐める、共謀罪を先取りするように。





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# by byogakudo | 2017-02-23 20:29 | 読書ノート | Comments(0)
2017年 02月 22日

(1)ドナルド・E・ウェストレイク/木村仁良 訳『二役は大変!』半分

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 男がすてきなお金持ちの美女と知り合う。彼女には一卵性双生児
の妹がいるそうだ。男は、はずみで、自分も一卵性双生児の兄だと
言ってしまう。

 お金持ちというだけで魅力的なのに、双子! 
 アメリカの小説の主人公は、グレイト・ギャツビー以来、お金持ちの
魅力に引き寄せられるのだろうか? そういえば、今日はウォーホルの
命日だ。お金持ちに美と権威と魅力を認めた彼の死から、もう30年。

 双子と寝ることを体験したくて、男はひとり二役を演ってみる。
前髪を垂らしてコンタクトレンズをはめているのが本人のアート、
オールバックで眼鏡をかけると、弟のバート。
 そういう無茶な設定で話はトントン拍子に進み、半分を過ぎた現在、
弟・バートは妹のベティーと結婚、兄・アートも姉のリズから求婚されて
いる。ひとり二役を強引に実行する無理が事細かに記されて、遺漏がない
のは偉い(?)けれど、退屈なのが問題だ。

 ミッチ・トビンのシリーズは好きだったが、他はどうもウマが合わない。
最後のミッチ・トビン『刑事くずれ/最後の依頼人』を、読んでいなかった。


     (ドナルド・E・ウェストレイク/木村仁良 訳『二役は大変!』
     ハヤカワ・ミステリアス・プレス文庫 1995初 J)

2月23日に続く~

呪 吐爛腐/呪 心臓亜屁/呪 共謀罪=ネオ治安維持法/





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# by byogakudo | 2017-02-22 21:16 | 読書ノート | Comments(0)
2017年 02月 21日

由良君美『セルロイド・ロマンティシズム』摘み読み/(2)井上究一郎『ガリマールの家』に追加

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 『セルロイド・ロマンティシズム』。もう、タイトルだけでクラクラ
来ちゃう。ジャケットでは『ラ・パロマ』のイングリット・カーフェン
が目を見開く。
 これだけで即、手に入れなくちゃと反応する。本は読めればいい、
寝ころんで読むには文庫本がいちばんという殺風景な質だが、そんな
奴でもたまに、稀にだけれど、単行本でなければならないときがある。
本のオブジェ性は単行本に表れるので。

 本が届く。包みを解き、本を手にする。ジャケットを眺め、ページを
ぱらぱら捲る。その際、文字に目を引かれて読むこともある。
 本は(どんな本でも)読まなくても持ってるだけで嬉しい。単行本は
さらなり。


     (由良君美『セルロイド・ロマンティシズム』
     装幀・梁間修作 文遊社 1995初 帯 J)

~2月19日より続く

 書き落としていたが、これも単行本の方が、読むにつけ持っているに
つけ、いいのではないかしら? 
 厚みはそれほどではないが灰色の堅牢な函、オフホワイトのやさしい
ソフトカヴァ、紫色も少し混じった濃い灰色の見返し、巻末のモノクローム
写真ページに入る前に、トーンの違う灰色のページを一枚入れて切替える
など、単行本ならでは、の装幀なので。


     (井上究一郎『ガリマールの家__ある物語風のクロニクル』
     装幀・栃折久美子 筑摩書房 1980年2刷 函 帯)



呪 吐爛腐/呪 心臓亜屁/呪 共謀罪=ネオ治安維持法/





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# by byogakudo | 2017-02-21 22:36 | 読書ノート | Comments(0)
2017年 02月 20日

斎藤美奈子『文学的商品学』読了

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 小説に代表される文学作品もまた、商品として流通するモノ
であることが露わな近頃、斎藤美奈子は、小説に用いられる
アイテム__服やファッション、カタログ化・ブランド化、
食べ物、ホテル、バンド、オートバイ、野球、そして貧乏__
を取り出して、文学作品を考察する。真正面から表層を見る。
身も蓋もなく、ともいえるが。

< 二〇世紀は、そもそも装飾性から機能性へと、衣服の役割が
 大きく変化した時代でした。[略]
 ことばからも装飾性が削ぎ落とされていきました。美文、技巧、
 大げさな比喩、描写過多、ことばの綾。凝りすぎたレトリックが
 「悪文」として槍玉にあげられるのは、二〇世紀に特徴的な文章
 イデオロギーです。
 [略]
  服も文もシンプル・イズ・ベスト。キンキラキンなのは嫌われる。
  日本の場合はこれが「内面重視」の(日本でいう)自然主義文学と
 結びついて、基本的には今までずっと続いてきたといってもいい
 でしょう。(外面を取り繕う)服の描写なんぞにウツツを抜かして
 いないで、「人間の内面性」をきっちり描きなさい。現代の青春
 小説といえども、そうした歴史的呪縛から完全に自由とはいえない
 のかもしれません。>
(p20-21『第1章 アパレル泣かせの青春小説)

<企画が先にあって、後で作品(のようなもの)をつけていくやり方を 
 「コンセプト・ワーク」といいます。小説にも、このような連作形式
 で書かれたものがたくさんあります。「カタログ小説」とでも申しま
 しょうか。
 [略]
 カタログ小説が盛んに書かれるようになったのは、八〇年代以降の
 傾向です。背景には、雑誌文化に加えて、広告代理店文化の興隆が
 あるように思われます。代理店の仕事が「文化」かどうかは意見の
 分かれるところでしょうが、ある時期以降の広告代理店は、モノそれ
 自体に「物語」を見つけようと躍起になってきました。モノの「性能」
 ではなく「物語」に投資する、八〇年代以降の消費者動向は、その
 ように変わってきたからです。>
(p75-76『第3章 広告代理店式カタログ小説』)

 いまでは記号(ブランド商品)さえ身につけていれば、他人(ひと)は
勝手に記号の背後に連なる物語を解読してくれ、それを身にまとう
"わたし"も、その物語の線上に在ると見なされる、と本人は(少なく
とも本人だけは)信じているようだ。うっとうしくも。

 軽やかに記号の戯れを続けながら、最後の章に至る。

 日本の「私小説」や「プロレタリア文学」を"元祖貧乏小説"と
まとめ、これらは、

<「知識階級=インテリゲンチャの貧乏小説」なのです。
 自分自身をモデルにした私小説の場合、主人公は必ず作家か、
 または作家志望者です。家を追い出され、子どもをつれて街を
 さまようことになっても、書きかけの原稿は後生大事に抱えて
 いる主人公。これが「インテリ貧乏」でなくてなんでしょう。
  一方、プロレタリア文学は、登場人物たちは底辺労働者でも、
 物語の表舞台には姿をあらわさない語り手がインテリです。>
(p255-256)と、自明すぎて見落としやすい事柄を指摘し、

< 日本が誇る貧乏ノンフィクションの多くは、知識階級の人々が
 使命感にかられて書いたものでした。それらが貴重な社会史の
 資料であることに変わりはありませんが、しかしそこに描き出さ
 れたのは「彼らの貧乏」です。一方、一人称小説、または三人称一元
 小説(ノンフィクションでも同じことです)が描くのは「私の貧乏」
 です。書くことでも読むことでも、あらゆる知的な作業には、人間の
 尊厳を取り戻す力がある。
 [略]
 貧乏小説だけではありません。獄中記も闘病記も女学生の失恋日記も
 みんなそう。
  そうなんです。残念ながら、ここは率直に認めなくてはなりません。
 人はパンのみに生きるにあらず、なのです。 
  ただし、書かれたものが人の心に訴えるかどうかはまた別の話です。
 [注:松井計の]『ホームレス作家』が読む人の心を動かすとしたら、
 「事実の重み」ゆえではなく、「事実の抽出」に優れているからです。
 そして、優れた作品は、必ず「パンの描き方」に秀でています。>
(p276-277『第9章 平成不況下の貧乏小説』)と、きっちり結ばれる。


     (斎藤美奈子『文学的商品学』 文春文庫 2008初 J)



呪 吐爛腐/呪 心臓亜屁/呪 共謀罪=ネオ治安維持法/
 ひとりよがりの野良ブログ空間を死守すべく、連中が退出する
まで、コールを続ける。コピー&ペーストに、どれほどの呪力が
あるものか、という疑問はあるけれど。





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# by byogakudo | 2017-02-20 22:17 | 読書ノート | Comments(0)
2017年 02月 19日

(1)井上究一郎『ガリマールの家__ある物語風のクロニクル』読了

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 読んでいるときも読み終わったときも、幸福感に包まれる。

 先に林哲夫氏がブログ(2014年9月8日 ガリマールの家)で
紹介していらした。何かつけ加えるようなことがあるかしらと
思うが、全部お任せも、感想文書きとして忸怩(?)たるもの
があるので、蛇足しよう。

 ガストン・ガリマールの死を伝える新聞記事が、記憶の始まりだ。
書き手は1950年代のフランス留学時代に連れ戻され、出版社の社屋
でありガリマール一族の住いでもあったメゾンに寄宿したころを思い
出す。

 出版社は外に開かれるシステムだが、ブルジョア家庭は閉鎖系だ。
井上究一郎は知り合いがガストンの甥、ミシェル・ガリマールに相談
してくれたので寄宿できた。
 ガストンもミシェルも、このメゾンのどこかに住まっているのは確か
だが、彼は、一族の人々とは誰にも会わない。

<親しくない間柄にいきなり電話をかけて用件をすませるのは、いかなる
 場合もこの国の作法ではないことを知っている私は、まず、この未知の
 領域のどこにその部屋があるともしれないミッシェル・ガリマールに、
 自分とおなじアドレスで、私がここに入居したことの挨拶を手紙に書いた、
 それはやがてこのおなじ建物の無数の部屋の一つに郵便物となってとどけ
 られるはずで、そしてそれですべてがすむのだった。>(p40 四)

 本は本から生まれる。本の記憶は異なる本への通路である。

<ネルヴァルの文学が土地の精霊との一体化によって形成されていると
 すれば、おなじパラメータをもつプルーストの文学、そしてその「心情
 の間歇」が、どこまでネルヴァルの心情の遍歴につながるかを、ぜひとも
 この目で見とどけ、この足で測り、この手でつかんでおきたかったから>
(p51 五)
__井上究一郎は、パリ交通公社・主催の遊覧自動車の日帰り旅行に加わり、
ヴァロワ地方やモルトフォンテーヌを訪れる。
 
 読み直さずに何年も経ってしまった『シルヴィ』。いつの間にか『グラン・
モーヌ』と混じり合ってしまったかのような『シルヴィ』(の記憶)。

 井上究一郎が上方のひとと知って、2月9日に書いたことを思い出す。
 読まずに死ぬはずだったプルーストだが、東京系と上方系の日本語訳
のちがいを感じるために(?)、鈴木道彦 訳と井上究一郎 訳との読み
較べをするべきだろうかと、瞬間、ばかなことを考える。


     (井上究一郎『ガリマールの家__ある物語風のクロニクル』
     筑摩書房 1980年2刷 函 帯)

2月21日に続く~


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# by byogakudo | 2017-02-19 22:37 | 読書ノート | Comments(0)
2017年 02月 18日

B・O巡回

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 近所のB・Oが2軒揃って閉店するらしい。どちらも欲しいもの
が少ない店なので哀惜の念も少ないが、なくなると不便だろう。
部屋から新高円寺や方南町まで、ちょっと距離がある。

 そこへ元・お客さまから息せき切った電話がある。
 「ね、今日、中野坂上のB・O、7割引なのよ! あそこ、
大した本はないけど、7割引、すごいでしょ」。
 というわけで、わたしも行った。

 土曜日の午後とはいえ、ひとが多い。7割引と聞いて、安心して
半額(以上)棚を見る。
 400円の文庫本3点__北村薫・宮部みゆき 編『名短篇、
さらにあり』(ちくま文庫)、柴田秀利『戦後マスコミ回遊記 下』
(中公文庫)、P・G・ウッドハウス『エムズワース卿の受難録』
(文春文庫)。
 棚には空きが目立つ。
 108円の文庫本1点__笠信太郎『なくてななくせ』(朝日文庫)。
 全4冊、392円。

 B・Oを出て青梅街道を歩く。道沿いの消防署の外壁からロープを
垂らし、消防隊員が降りる訓練をしている。

 せっかく出て来たんだから、部屋に近い方も覗く。ここはセール
していない。
 108円の文庫本1点__斎藤美奈子『文学的商品学』(文春文庫)。



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# by byogakudo | 2017-02-18 21:38 | 雑録 | Comments(0)
2017年 02月 17日

共謀罪は凶暴である

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 安倍晋三・以下、嘘をついてる意識すらなく、出放題のデタラメ
ばかり聞かされる。

 共謀罪(ことテロ等準備罪)について、安倍晋三はこれまで
<「一般市民が対象となることがあり得ないよう検討している」>
と言い続け、
法務省刑事局長・林真琴(まこと)も
<「そもそもの結合の目的が犯罪の実行である団体に限られる。
 普通の団体は除外される」>(1月30日 参院予算委員会)と答弁。

 しかし法相・金田勝年は、
<普通の団体でも、犯罪を反復継続するなど性質が変わったと
 認められた場合に処罰対象となる可能性を否定しなかった>
(2月2日 衆院予算委員会)。

 首相・刑事局長と、法相の見解の不一致を問われた法務省は、
ついに、
<普通の団体が性質を一変させた場合も、処罰対象の「組織的
 犯罪集団」になり得るという政府統一見解を示した。>
(2月16日 衆院予算委員会理事懇談会)。

 たとえどんな答弁であれ、正直に答えるのは、いいことである。
久しぶりに嘘じゃない言葉が聞けた。
 共謀罪が憲法に保証されるところの、内心の自由を侵害する機能を
持たせた法律であることを自ら認めたのは、認められる行為である。

 だが、この点を指摘された安倍晋三は、また頭の悪さをむき出しに
して、
<「そもそもの目的が正常でも、一変した以上、組織的犯罪集団と
 認めるのは当然だ」>と居直り、
<オウム真理教を例に「当初は宗教法人として認められた団体だった
 が、犯罪集団に一変した段階で一般人であるわけがない」と強調>
(2月17日 衆院予算委員会)。

__しかしオウム真理教が犯罪集団と認識されたのは、事件を起こした
ことが明らかになって以後だ。誰かを殺したいと心で思っている段階では、
宗教上ではともかく、何人も、法的には無罪である。

 権力にとって使い勝手のいい共謀罪は、たとえば反政府デモにも犯罪集団
のレッテルを張ろうと思えば張れる。今だってすぐ、公務執行妨害という名目
で逮捕しておきながら、今更これ以上の、権力にとって使いやすい法律を作り
たいってのが厚かましい。
 こういう極めて凶暴な共謀罪(ことネオ治安維持法)の危険性、という根本的
な問題に目をつむる。馬鹿で気狂いだから、目をつむっていることにも無自覚
だろうが。

室井佑月が金子勝と安倍政権批判(前)

室井佑月が金子勝と安倍政権批判(後)

室井佑月が山口二郎と語る野党の闘い方

呪 吐爛腐/呪 心臓亜屁/呪 共謀罪=ネオ治安維持法/

 民放のニュース番組は白か黒かをすぐ判断できる、"分かりやすさ"
重視の編集で構成される。外国人の発言は日本語に吹き替え、食事の
支度に忙しくて字幕を読む暇がない人の便宜を図る。親切ついでに、
発言者が悪人か善人かを分別しやすいよう、声優にはどちらかのトーン
で喋るよう指示が出されているのだろう、直接話法は白黒(善悪)の
色分けがされ、間接話法の中性的声質は避けられる。

 ところが、トランプに限って、日本語吹き替えを聞いたことがない。
 TVをあまり見ないから、吹き替え版のニュースもあるのかもしれないが、
吹き替えに伴う白か黒かの色分けにTV局は困っているのだろうか? 
 善人口調に吹き替える訳に行かず、聞いた途端に悪人だと分る口調で
吹き替えるのも、安倍晋三・独裁政権下では憚られ、かくて、近頃珍しい
字幕付きになったと判断している。





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# by byogakudo | 2017-02-17 21:28 | 雑録 | Comments(2)