猫額洞の日々

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2005年 12月 04日

(2)「わが切抜帖より/昔の東京」「銀座細見」

~12月3日より続く

 昨日の続きです。

 人見幸子(ひとみ・さちこ)は蒲田の女優になったりしたが、
<最後には直木(三十五)氏の知つて居る或る家に厄介になつて居た。> 
 彼女が初めて三十五に会ったとき、
<彼女は直木氏の顔を見ると、挨拶もしないでイキナリ云つたものだ。
「オ前さん、変り者だつてネ、それぢや世間は通らないよ」>

 幾つなのかどちらの本にも記されていないが、彼女は失恋自殺する。晩年?の
彼女について永井龍男から引用します。

 京橋・木挽町の花柳地に、和風三階建ての文藝春秋倶楽部があり、直木三十五が
<拾ってきた>若い女性たちが寝泊まりしていたが、

<この直木さんが「拾ってきた」女の一人が、提供されたここの三階の部屋で服毒
自殺を遂げ、大きく三面記事になってわれわれを驚かせたこともある。岡山あたりの
素封家の娘で、家出後は東京を転々としたらしく、最後は銀座のサロン春という
カフェーの女給をしていたが、家からの仕送りもあって奔放に暮し、当時流行歌の
作詞家として高名だった某詩人のほか数人の関係者があり、その上かげに銀座を
縄張りにしたボスのひもがついているという訳で、死後妊娠していることが判った。
 昭和元禄などというが、昭和十年頃の世相は、大正自由主義とでもいった気風が
爛熟し、とくに享楽的な面では現代と非常によく似たところがあった。>


 やっぱり安藤更生が好き! 「銀座細見」中の「女給篇」からも少し書き抜いて
おきたい。

<女給は解放期に向かつて居る日本女性にとつての一つの重要な職業である。・・・
女性の経済的独立といふ必要から見れば、これは重要な位置にある新職業である。
今の一般女性の教養と社会的地位からいへば、女給は一番たやすく出来る仕事だし、
就職の機会も多く、且つ比較的多くの収入を得ることが出来る商売である。昔は女が
自分の力で金を得ようとすれば、自分の体を売るより仕方がなかつた。今でも多くの
女はそれをしている。__例へ結婚といふ美名にかくれてはいても__。>


「銀座細見」 安藤更生 春陽堂 31初。(中公文庫版が探しやすいでしょう)。
「わが切抜帖より/昔の東京」 永井龍男 講談社文芸文庫 91初帯。


(1)「銀座細見」「わが切抜帖より/昔の東京」
(2)「わが切抜帖より/昔の東京」「銀座細見」


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# by byogakudo | 2005-12-04 16:14 | 読書ノート | Comments(0)
2005年 12月 03日

(1)「銀座細見」「わが切抜帖より/昔の東京」

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 安藤更生の本業は木乃伊研究であろうが、わたしに取っては ただもう永遠に
「銀座細見」の著者である。

 学者の道を進もうと決意し、慣れ親しんだ銀座と決別するために書かれた
「銀座細見」は、軽妙な調子(街行く人々の考現学的考察とか)を保ちつつも
哀切さが全篇に感じられる。殊に銀座のカフエ「ジヤポン」の章に記された
人見幸子(ひとみ・さちこ)或は人見ゆかりという若い女性のエピソードの哀しさは
忘れられない。

 「ジヤポン」に毎晩のように遊びに来ていたフラッパー・お嬢さんは、神戸の
お金持の令嬢だが、既に実家は没落し、父親は代々の什器を売って生き延びている
骨董商だ。

 彼女は嗜眠性脳膜炎を患ったせいで(本当かしら?)時々 突拍子もないことを
言い出したり、若い男たちと恋愛して「男の誰もがよく持つて居る疾患にかかつ」ても
「平気で逢ふ人毎に話すのである。」
 西條八十の内弟子になっても詩を作るわけではなく、
「よく洋装して或時は西條氏と、或る時は独りで、或る時は多勢のモダンボーイに
 とり巻かれて銀座を歩るいて居た。彼女は誰とでも平気で附き合ふのだ。何処へ
 でも行くのだ。さうして何でもするのだ。」

 こういうモダーンガールだけれど、安藤更生はその無垢を愛している。

 「彼女はほかのモダンガールのやうに悪るく神経的であつたり、気取り屋ではない。
その非常に都会的な美貌の蔭には、素朴な精神を包んで居た。こんな点を多感な
西條氏は好きだつたのだろう。彼女はしまひにはモダンボーイのおもちやのやうに
なつてしまつたけれど、それは性の乱舞に酔ふしれて居る彼等の恥にこそなれ、
彼女にとつては一つの自由解放であつたに違ひない。女が彼女のやうに自由に男と
附き合へるようになりさへすれば、僕等が考へて居る社会改造の一端は成就された
やうなものだ。だが今の社会はさうた易く解放はされない。彼女の行為だつて、
半ばは嘲笑的にしか迎へられなかつた。彼女に好意を持つ者でも、美しい白痴の娘とか
何とかいふロマンチツクな夢を通してでなければ接しようとはしなかつた。僕は其点を
彼女に気の毒に思ふ。」

 旧仮名遣いの長い引用で申訳ないが、安藤更生って素敵でしょう?! 
大正デモクラシーって本気だったんだ。彼女の晩年の様子が永井龍男に少し
書かれているのだが、わたしも疲れましたのでまた明日。(明日の引用文は短く
なります。ご心配なきよう。)

12月4日に続く~


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# by byogakudo | 2005-12-03 12:34 | 読書ノート | Comments(0)
2005年 12月 02日

一日に3箇所?!

 と言っても同じ神保町界隈で3箇所であるが、体力のない わたくしどもには
オーヴァーワークだ。
 いつものタリーズで しょぼんと、元気回復を待つ。買ってきた本を取出す力が
なかなか出ない。それでもいつしか Sは「レナード・コーエン伝」を開き、わたしは
「SONO・SONO(ソノソノ)」__タモリや赤塚不二夫たちのお喋り本__に読み耽る。

 明日アップします、今回はグラフィック系ゼロ。めずらしい。(週の半ばに
新着欄を経ずに上げたものがありますが)。そして 文庫本が多い。
 棚にある文庫を項目毎に入れなきゃと思いながら、いまだ実行していない。早く
手がけないと億劫になるだけなのに、こんなに閑なのに何故やらない?! 
と叱咤激励していますので、気長に待って戴けるとありがたい、です。

 永井龍男が直木三十五について書いた中に、安藤更生「銀座細見」中の或る
フラッパーの話と同一人物が出て来ている。この件を書きたかったけれど、
ちょっと今日はエネルギー不足なので、近いうちに。


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# by byogakudo | 2005-12-02 20:26 | 雑録 | Comments(0)
2005年 12月 01日

森茉莉さんとお茶を(5) 忘れないうちに/でも忘れます

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 まだ若くてスノッブなアイドル時代の加賀まりこが(安井かずみと一緒に?)
状況劇場を見に行った。地べたに坐らされたのが嫌だったようで「あんな汚いとこ
いやだわ」と発言したのを知った森茉莉さん、
 「なんて馬鹿なの!」と軽くお怒りになったことを昨夜 思い出したので、
忘れないうちに書いておきます。
 「話の特集」か何かで読んだ記事をお話しした時の 反応だったかもしれません。



 永井龍男はやはり既読だと、ようやく知る。頭から読まずに寄席話あたりから
読んだので解らなかったが、最初の「水晶」という 石井桃子が北米で過ごした
クリスマス風景の話で思い出した。
 眠る前には非常に気持よい本なのだけれど、もう少し気分を上げてくれてから
愉しく眠りに就ける本はないかしら。平出隆「猫の客」(河出書房新車 01初)も
読みかけているが、垂直性の強い文体なので、寝る前にはあまり向かない。


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# by byogakudo | 2005-12-01 15:13 | 森茉莉 | Comments(0)
2005年 11月 30日

おとなしく永井龍男を読みながら

昨夜は眠る。その前に 勿論TV「落下女」を見ていた。

 音楽シーンがないから、「シャボン玉ホリデー」というより「大人の漫画」や
「ゲバゲバ90分」の流れではないかと言われたが、これらのルーツは「シャボン玉
ホリデー」であるし、昨日の「落下女」なぞ、男たちが女の子に向かって一斉に
同じ台詞を発するとき、声を揃えるのではなく 歌になっていた。いよいよオマージュ
ではないか。
 DVDが発売されるそうだけれど、さすがにそこまで買えない。自分用の本代さえ
おぼつかない。かなしい。

 永井龍男「わが切抜帖より/昔の東京」は数篇読んでも 未読・既読が判断できない。
これも かなしい。でも落ち着いて眠るには良い本だ。賞賛しているのです。


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# by byogakudo | 2005-11-30 18:11 | 雑録 | Comments(0)
2005年 11月 29日

「季節の記憶」読了

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 地の文章での考察(人間は言語でできている 云々)等、好きになって
おかしくない小説なのに、どうも愛せなかったのは偏にヒッピー・コミューン?
めいた設定のせいではないだろうか。思わぬところに躓く。

 寝床本が足りない(!、2冊は途中本があるけれど)ので、「わが切抜帖より/
昔の東京」(永井龍男 講談社文芸文庫 91初帯)を買ってきた。以前読んだ気もする
けれど、幸か不幸か記憶が淡い。ほんとは わくわくするような探偵小説が読みたい
気分なのに。(あとでまた探しに出ようかな。)

 ところで最近の「東京新聞」は少女文化花盛りの様子だ。夕刊には千野帽子__
どんな方か、よく存じ上げません__の「文藝ガーリッシュ お嬢さんの本箱」と
いうガーリー文学紹介欄が連載中、朝刊の「わが街わが友」(著名人による「私の
東京生活」みたような連載エッセイ欄)は目下 内藤ルネです。いっそガーリー・
ペイパーにならないかしら?無理でしょうが。

 昨日の「文藝ガーリッシュ」は小泉喜美子「ダイナマイト円舞曲(ワルツ)」。
事件が起きるまでの粗筋を紹介して、「字で読む少女漫画」と評しているが、
これは実は、ミステリ的には とてもお勧めできない本だ。「ゼンダ城の虜」を
下敷に、少女による冒険ミステリが書きたかったのだろうが、しどろもどろで、
よく結末まで持って行けた というのが、ミステリのお師匠さんと不肖・わたくしの
感想です。
 ガーリー文藝の枠で紹介しなければならなかったので 仕方ないのだが、
小泉喜美子は「血の季節」がベスト、次が「弁護側の証人」だと思う。
「血の季節」は「紅はこべ」を狂言廻しに、日本を舞台にした
吸血鬼文学の傑作です。


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# by byogakudo | 2005-11-29 14:43 | 読書ノート | Comments(0)
2005年 11月 28日

たまたま当店を見つけて下さった方が

本と印刷物がお好きだと仰る。「友人がやっています」と、京橋の文房具屋さん__
いや、stationery shop と呼んだ方がこの場合 相応しい __POSTALCO
教えて下さった。

 ご覧の通り 素敵な品揃えだ。インターネットで世界がつながるのではなく、郵便で
世界中つながっているというコンセプトからして素晴らしい。だって情報は整理した
結果であって、たとえ四六時中PCに向かっていたとしても、周囲を見渡せば具体的な
時空間ではありませんか? アナログな感覚を忘れ去るとろくでもない現実しか
作れないんじゃないかと、PCが身にそぐわない旧人類は思う。

 実をいえばメールも嫌いじゃなくなっているけれど、郵便屋さんから手紙や絵葉書を
手渡される喜びは、やっぱり持ち続けたい。「癒し」とかいう いやらしいセンスは拒否
しますが、具体性・身体性は意識していたいのです。



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# by byogakudo | 2005-11-28 17:33 | 雑録 | Comments(2)
2005年 11月 27日

「季節の記憶」

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(保坂和志 中公文庫 99初)。実は少し前に読みかけて中断していた。昨夜 捗ったので
もうちょっとで終わりそうだが、認識論小説かしら?

 ユートピア小説とも言える。山と海に囲まれたある種の桃源郷に暮らす
コンビニ本のプロデューサーである主人公に、地域の便利屋をしている友人、彼らの
交わす会話がメインの小説(に思えてきた)。会話の内容はいいのだが、彼らの
職業設定があんまり好きになれなくて。レイドバックした生活者じゃないと
認識論を語るのに不適切だろうか? 鎌倉から都内に通うサラリーマンを主人公に
もってくると、これらの会話は成立しにくくなるだろうかと、妙なところに
引っかかってしまった。


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# by byogakudo | 2005-11-27 13:35 | 読書ノート | Comments(0)
2005年 11月 26日

「時計は十三を打つ」その他

 やっと読み終える。かなり酷かった。古き美しきニューイングランドと勝手が
違う、サヴァイヴァルな環境で行動しつつ推理するので忙しかったのだろうが、
主人公 レイノルズ・フレームは新婚の奥さんを思い出しもせず、早くニューヨークに
帰りたいと一度願うくらいで、割に冷静に、細菌兵器実験島の2女性のひとりは
美人だなぞと考えたりしてるのは、一体どういう神経だ?

 「もう生きてはいまい」も誰のことを指すのか よくわからなかったが、「時計は
十三を打つ」も、真夜中 不気味に十三回 時を打つシーンの翌朝には、あの時計は
いつでも十二回じゃなく十三回鳴るんですと、島に住む研究者が教えてくれる。
 この本では「部室」表記のみでした。西田政治訳では、人は「部屋」ではなく
「部室」に住むことに決定。

 同時進行的に「名探偵登場_日本篇」(新保博久 ちくま新書 95初)も読む。近頃の
日本のミステリ作家を知らないので、少し予備知識が欲しかった。特に読んでみたい
小説家も見つからなかったけれど、間に挟まる「余は如何にしてミステリ評論家に
なりしか」?エッセイが面白い。

 他には「じゃがたら紀行」(徳川義親 中公文庫 80初)を諦めたことと、お借りした
ままの「季節の記憶」(保坂和志 中公文庫 99初)に取掛かったことでしょうか。
 風邪は薬を呑んでなんとか押さえています。

 毎週末更新を謳う「新着本」ですが、先週半ばに少し入れ替えましたので、また
様子が変わっています。よろしく。


新着本

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# by byogakudo | 2005-11-26 17:51 | 読書ノート | Comments(0)
2005年 11月 25日

出かけては見たけれど

体調がよくない。喉の痛みは広がってるし、頭痛もする。ともかく戻ると宣言して
部屋で少し横になる。落ち着いたらPCが気になって、結局 店にやって来た。(この
貧乏性!)
 今から病院に行ってきます。皆様、風邪にはお気をつけ下さい。


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# by byogakudo | 2005-11-25 14:42 | 雑録 | Comments(0)