猫額洞の日々

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2005年 09月 23日

森茉莉さんとお茶を (3)

 談話は状況説明がないと誤解を招く。前回の澁澤に対しては、子供が拗ねるような
調子、寺山については、それほど怒ってはいらっしゃらないが、でも軽く馬鹿にして
いらしたと付け加えておく。

 もっと注意して伺っておけばよかったと思うのが、「枯葉の寝床」の扉写真の話。
 「車で厚木の方 走っていた時、見つけたお家なのよ。すぐ、写真撮ってって
頼んだの」。これは何かの取材の行き帰りの時のことだったのだろうか? 
(もしこの推理が正しいとしたら、それはもしかして「ミセス」連載時の話では
なかろうか?
 そうすると、あの写真は高梨豊が撮ったことになりそうだけれど、「ミセス」に
「私の美の世界」等を連載されていた時期と合うかしら?)
 
 また、「あたしの本、編集者が気を使って、下のノンブルの字体も変えてくれてる
のよ」。「贅沢貧乏」の話の時だったような気がするが、この時の編集者は誰だった
のか?これも解らないし、
 「あたしみたいな作家は あんまり他のひとの小説 読まない方がいいって、編集者が
言うのよ」。これも誰だったのだろう。
 何しろ森茉莉以外の日本語文学に全く興味がない時期だったので、いまなら
 「その担当者は栃折久美子でしょうか?」なぞと訊ねられるが、当時は
 「パッパの小説、退屈よ」と仰る言葉を鵜呑みにしてしまって、おかげで20年後に
初めて鴎外を読んで、日本語の美しさにびっくりしたような体たらくである。
 小説家の発言を文字通りに受け取る馬鹿な若い女にも困ったものだ。

 森茉莉は性的なことに関しても、明治の女性にしては率直にお話されていたが、
発言は記録しない。作品の中に昇華されて発表されているからだ。

 山田珠樹との結婚については、
 「いまから思うと、珠樹も可愛そうなのよ。あれは病気だったと思うもの。
 でも、いまの人はあんまり辛抱しなさ過ぎるわよ。あたしだって10年 我慢したん
だもの」。そして、ある晩 駅まで送って下さったとき、
 「ひどい結婚のことをモリマリアージュっていうのよ」と冗談ぽく仰っていた。

 いまでもよく理解できないのが、辰野隆に代表される人々への彼女の恐怖感だ。
たしかに彼らの貝殻追放のせいで、それまで付合って来た学者や芸術家の環境から
はずれ(鴎外の環境と言ってもいいだろう)、ひとりにされてしまったのだけれど、
それにしても、お目にかかっていた彼女の60歳代になってもトラウマは続いていた
ようだ。
 彼らのことは「ひどいこと言われちゃって」というような言葉で限定して、
それがいまのご自分に降り掛ってこないよう、相変わらず用心していらっしゃる
ような感じを受けた。

 森茉莉は自分の声がくぐもっていると書かれているけれど、お目にかかっても
電話でも、それほど聞き取りにくい声とは思えなかった。滑舌のよいクリアーな発声
では なかったが。
             
             *

 71年頃にわたしは いわばパラレル・ワールドに越してしまい、それ以来お目に
かかることはなかった。
 70年ころのパリで流通していたコカコーラの空瓶を差上げなかったのが、いまでも
悔やまれる。日本で使われている厚手の頑丈そうな瓶ではなく、もっともろい薄手の
森茉莉好みの瓶だったから。
                    <了>




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by byogakudo | 2005-09-23 21:20 | 森茉莉 | Comments(2)
Commented by プリン at 2006-01-22 17:05 x
はじめまして☆
群 ようこさんの「贅沢貧乏のマリア」を読んで、初めて森 茉莉さんを知り、本を読んでみたいなぁと思ったのですが、一般にはほとんど売られていないのですね(>_<) 仕方がないので、近々ネットで購入しようと思っています。
そんな風に森茉莉さんの本を探している時に、このブログに出会ってびっくり! 実際にお会いになっているなんて! わたしは彼女の本にも会えないというのに…f^_^;
貴重なお話、楽しんで読ませていただきました♪
Commented by byogakudo at 2006-01-23 13:32

ありがとうございます。たまたま時代が合って、お目にかかれた
のですが、森茉莉さんは ほんとに生き生きした素敵な方でした。
お目にかかっても、「贅沢貧乏」の読後感と同じ印象でした。
もしお近くでしたら、どうぞ店(猫額洞)の方へお立寄り下さい。
単行本でしたら少しございます。


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