2009年 11月 29日
click to enlarge. 原題が " THE KRAKEN WAKES "、日本語訳では「海竜めざめる」。 宇宙から飛来した生命体が作り出したバイオ兵器(?)に人間が襲われる シーンでは、腔腸動物系の戦車が海から上陸して、建物を壊し、人間に 粘液を吹きつけて絡めとる場面が描かれている。 ところが肝心のKRAKENであるが、最後まで読んでもどんな形態の 知的生命体だか、書かれないまま終る。ずるいよ、と言いたくなるが、 それが主旨ではなく、社会構造が基盤から破壊され、共同体が崩壊する ときのありさまや対処方法が書きたかったようなので、仕方ない。 化け物はあきらめよう。 崩壊した共同体を社会的に描くのがジョン・ウィンダムで、渦中に ある個人の崩壊を描くのがJ・G・バラード、ということか。 (HPB 66初) しっかり書いてあるのに、導入部は、ちゃんと入れたのに、とうとう 感情移入できないまま遠田潤子「月桃夜(げっとうや)」を読み終える。 奄美大島のエキゾティックな風俗や民俗描写にノレなかったのか、 それとも、会話場面や地の文で説明し過ぎる文章に入れなかったのか。 大鷲の語る物語、とくにエンディング近くは急ぎ過ぎて、人物の語る 言葉が解説めいている。読みながら、書かれた文章の地平から飛翔する 瞬間がついに来なかった。合わなかったのだろう。 (新潮社 09初 帯 J)
by byogakudo
| 2009-11-29 14:23
| 読書ノート
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