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猫額洞の日々

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2009年 12月 12日

小田雅久仁「増大派に告ぐ」読了

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 今週の新着欄です、よろしく。
 新着欄 

 子どもの凶悪犯罪が増えたという、思い込みが蔓延して久しい。
敗戦直後を想像してみればいい。大人も子どもも、何らかの犯罪
行為に手を染めなくては、生き延びられなかった筈だが。

 訳の解らない犯罪が報じられる度に怯えるだけで、想像力を働かせる
ことを怠り、「電波系」や「心の闇」と名づけ、ジャンル分けして、
解ったつもりになっている人々への怒りが、もしかしたら作者にこの
作品を書かせたのだろうか。
 読み終わって、そんなことを思う。

 エントロピー理論に裏づけられた終末論者であり、妄想に悩まされる
ホームレスの男と、家庭内暴力にさらされている14歳の少年の物語が
交互に語られ、弱者がより弱者を襲い、少年は己の卑怯さを認識させ
られるという、やりきれない結末を向える。

 結末に到るまでも、ふたりの苦痛に満ちた日々が、これでもかと
ばかりに、しつこく描かれ、けして読みやすい小説ではないが、半端な
癒しに逃げない姿勢が好もしい。
 
 やせ我慢が男らしさの最低の条件だった時代から、あまりに遠く
離れてしまった今なんだなと、作者から引導を渡されたような気分だ。
 どうしようもなさが、具体的にどのように、どうしようもないのか、
袋小路の詳細レポートみたいにも読んだ。
     (新潮社 09初 帯 J)

by byogakudo | 2009-12-12 13:26 | 読書ノート | Comments(0)


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