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猫額洞の日々

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2010年 02月 05日

増村保造「最高殊勲夫人」を見た

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 コメディのようだが、「ねっとりした喜劇」というコメディらしからぬ
後味だ。

 東山千栄子の山の手マダムが、上品な早口で愛想のいい言葉を連射し、
相手が返事しようとする瞬間すら与えず、抱いていたテリアを押しつけて、
女中にお茶を言いつけに行くシーンとか、部分でおかしい場面はあるのに、
全体としてコメディ感がしない。スピードの問題だろうか。

 それはともかく、1959年の東京風景が残されているだけで素晴らしい。
タイトルバックのデザイナは誰だったのだろう? クレジットがないようだが、
丸の内や大手町の近代建築群の壁面に、キャストやスタッフ名が並ぶ冒頭から、
嬉しくなった。(壁面だけ見て、全部のビル名まで当てられれば文句なしだが、
残念ながら解らない。)

 郊外に住む(どこだか見当もつかない)若尾文子が、丸の内の会社に
社長秘書として勤め出す。この当時だからOLではなく、「ビジネス・ガール」と
呼ばれている。略称のBGは、使われていない。

 昼休みの屋上からは丸ビルが見える。丸ビルの見え方(角度)からして、
丸の内ホテル辺りでの撮影なのかしら。
 日比谷公園での昼休み風景もあり、高い塔(?)が見えるが、不明。

 満員の通勤電車シーンに変る直前が圧巻である。
 正面奥に聖橋、土手際に覆いかぶさるように建つ「自由学校」流派の
建物、画面左端には国鉄・総武線が走り、聖橋の右下トンネルから赤い
車体の地下鉄・丸ノ内線が出てくる、そして最後に、土手上では画面奥へ
向かって、都電が進んで行く。
 もう、このシーンだけで充分。また一本、東京映画が増えた。

by byogakudo | 2010-02-05 20:24 | 映画 | Comments(0)


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