2010年 07月 28日
click to enlarge. 併読中があるのに、飛び入りで「音楽」(小澤征爾・武満徹 新潮文庫 84初 J)を読み終える。 1981年新潮社刊が元版、78年から79年にかけて行われた三回の 対談から構成された本だ。武満徹は1996年死去、5歳年下の小澤征爾も 病を養っている現在だ。 <国家と芸術家>というテーマで話し合われた第三章で、当時、 実現化されようとしていた国立オペラ劇場について、武満徹が 悲観的に述べている。 < [略]しかし国家が、僅かな金にしても、金を出すが口は出さない、 そういうしゃれたオペラハウスを建てると思う? 新しい音楽官僚が 登場し、それに迎合する芸術家が現われないと言える? 文部官僚の 伝統からいってそういうことが期待できる? そこが問題だと思う んだ。>(p177) それを受けて小澤征爾が、文部省選定の小学唱歌に代表される、 明治以来の音楽教育の問題点を語る。 <小澤 [略]つまり音楽は御上(おかみ)から与えられたものだったんだよ。 [中略]だから自然に、音楽家が成功すると、文部省や国家や官僚と 結びつきたくなってくるんじゃないだろうか。[以下略] 武満 [略]音楽家として成功すると国家や体制と結びつきたくなるの ではなくて、音楽家として成功してある社会的な地位を占めたあとで、 創造力や音楽生性が衰弱してくると、体制の力を借りなければ ならなくなるんじゃないかな。>(p177~178) 音楽に限らず、西洋文明を取り入れた後の日本の近代化の問題として、 ずっとツケを溜めて来たことが問題なのだと思う。意識して清算しようと した試しがあっただろうか、なしくずしにうやむやにするんじゃなくて。 意識すると、すぐ聖戦になっちゃうのかしら? 堪え性のない。
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by byogakudo
| 2010-07-28 13:12
| 読書ノート
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