2010年 10月 10日
click to enlarge 「雨瀟々」の方を途中でSに廻したので「すみだ川・新橋夜話 他一篇」(永井荷風 岩波文庫 87初 J)をまた読んでいる。 「深川の唄」から引用__ <[略]その頃の自分は若いものであった。煩悶を知らなかった。江戸 趣味の恍惚のみに満足して、心は実に平和であった。[中略]近松や 西鶴が残した文章で、如何なる感情の激動をもいい尽くし得るものと 安心していた。音波の動揺、色彩の濃淡、空気の軽重、そんな事は 少しも自分の神経を刺激しなかった。そんな事は芸術の範囲に入る べきものとは少しも予想しなかった。日本は永久自分の住む処、 日本語は永久自分の感情を自由にいい現してくれるものだと信じて 疑わなかった。>(p21) 吉田健一は荷風の文明批評家振りをからかって眺めているような フシが感じられるが、荷風がいて、からだを張って日本語と日本語の 感受性の領域とを鍛え拡げてくれたからこそ、吉田健一の太やかで エレガントな文明批評も後に続くことができた、というべきではないか。 少なくとも吉田健一の青年時代には、明治の父権主義バリバリの 日本ではなかった訳だし__その代り、父権主義・強権主義の派生物 たる軍国ニッポンが待ち構えていたが。
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by byogakudo
| 2010-10-10 13:20
| 読書ノート
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