2010年 12月 18日
click to enlarge 映画は細部(と省略)が決めてだ。ヒロインにお見合い話を持ってきた 女性が抱えている織り地の和装ハンドバッグ、実家での夕飯時、甥の 少年が見せる、カメラ目線でない子どもらしさ。安心して昭和30年代 という時代設定が受け入れられる。 いやしくもスローラーナー制作の映画に、そんな基本条件が欠けている訳は ない。失礼極まりない怯えだが、いい加減な、気分としての昭和30年代風 映像の垂れ流しに疲れ、日本映画で近過去を描くのは可能だろうかと、絶望 していた観客を、見事に映画の中に誘ってくれる、すてきなオープニングだ。 映画館で映画を見ることの快楽のひとつが、ヒロインたちが折りに触れて渡る 橋や、田園風景のロングショットである。TVモニターでは、けして味わえない 快感だ。 時代設定が昭和30年代であっても、撮影は50年後、21世紀になってから である。背景に現在の風景が映ろうと、ハイキーに飛ばすことで、省略と、 人生が今に続くことの明示とが、同時に行なわれる。 イギリス人にとっての家が城であるなら、日本人のヒロインには、繭だろうか? 自分の皮膚のようだった実家を離れ、お見合いまでは見知らぬ他人だった男の 住む家に暮らし始めた彼女の心もとなさや、それでもここで生きようとする意志が 画面から適切に伝わってくる。 彼女は、じつは砦に暮らし始めたのだ。 ボロ家である砦は、不断に外部の勢力にさらされる。いきなりの米屋の訪問で ツケが溜まっていることをヒロインが知るシーンは、勝手口横に付けられた鏡に、 米屋の横顔が映ることで二重に強調される。 砦に立てこもる売れない貸本漫画家の夫は、すべてを「ハハハハ」という 笑い声で吹き飛ばす。(続く) 今週の新着欄です、よろしく。 新着欄
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by byogakudo
| 2010-12-18 13:05
| 映画
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