2011年 04月 03日
click to enlarge このところHPBの女性ミステリ作家をあれこれ読んでいるが、 ドロシイ・S・デイヴィス「暗い道の終り」に続いて、すてきな 作品に会えた。シェリイ・スミス「午後の死」(HPB 83初 帯)である。 砂漠に不時着した現代青年(といってもエドワーディアンの現代)が、 砂漠の小村に隠遁するヴィクトリア朝の老夫人と知り合う。 飛行機の修理を待つ間、老夫人の昔語りにつき合う青年は、最初は 非科学的な時代の昔話なんてと思いながら(彼はフロイトかぶれ)も、 招かれざる客である立場上おとなしく聞いているが、結局、彼女の 身の上話を全部聞いてしまう。 老夫人の前身は、ヴィクトリア朝の大家族に育った不器用なお嬢さん。 当時のこととて、お金持ちであろうと女に教育は授けられない。結婚 相手が出現したら結婚して、子どもを生み育てる人生しかない。 ところが継母が殺されるというスキャンダルが起き、お嬢さん・ 若奥さんは頑張りを見せる。なかなかに波瀾万丈な半生なのだ。 原題 "AN AFTERNOON TO KILL" が絶妙。オチもすばらしい。 好みに合う作家は、まだまだ、いそうだ。 しかし、アントニア・フレイザー「赤い絵は見ている」(HPB 83初 帯)は、残念ながら、どうでもいいミステリ。 有能なTVインタヴュアーである知的で美人の主人公も、殺された 彼女の女友だち(現代のジェイン・オースティンらしいが)の堅実な 作風と実生活のギャップも、周囲の知的な人々とのギリシャ神話や文学を ちりばめたお喋りも、どれも記号としてしか機能しない・存在しない 退屈さである。 こんなこともあるさ。
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by byogakudo
| 2011-04-03 13:43
| 読書ノート
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