2011年 06月 15日
click to enlarge ハードSF系だろうと思って、ずっと敬遠して来たが、薄いし(文庫本で 約170頁)、Sが愉しそうに読んでいたので、わたしも試みる。 面白かった! ある日、ニューヨークで時間の混乱が始まる。 同時刻の筈の時間が地域によって異なるから、飛行機の発着はできない、 TV放送に周波数を合わせるのも難しくなる等々、街が混乱状態に陥る。 これは誰か(何か)が時間を盗んでいるからではないか、ということで、 ニューヨーク市警の刑事が捜査を担当する。 なぜNYPDって思うけれど、そういう設定なので読んで行くと、アリストテレス 以来の時間論がざっと紹介され、刑事は学者や神学者たちに聞き込みに回る。 アナログは強いよ、という教訓も含まれているようだが(原作発表は1994年)、 登場人物のキャラクター設定が愉快で、すいすい読める。 何か聞かれると瞬時に直感的に、身も蓋もない反応を示す(刑事の)女秘書と、 アイルランド系神父が好きだ。 神父によれば、アイルランド人はキリストを生活の規範としているそうで、なぜ ならキリストは、 <三十になってまだ家にごろごろしていて、十二人の誠実な大酒飲みを従え、 しかも彼が神であることを、彼自身もその母親も疑っていない・・・・・・> (p146)から。 愉しく読みながら、読者も自ずと時間について考え始める、すてきなSFだ。 (創元SF文庫 95初 J)
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by byogakudo
| 2011-06-15 12:34
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