2012年 08月 02日
click to enlarge 写真は、荻窪・教会通りのクリーニング屋さん。 その荻窪・ささまの均一台で買った小林信彦「裏表忠臣蔵」 (山田風太郎「妖説忠臣蔵」と隣り合っていた)を一昨夜、読了。 やっと納得できる忠臣蔵解釈に会えた。 だって、なぜ忠臣蔵が好まれるのか、長い間、理解不能だった。 よしんば苛められていたとしても、あんな場所で刀を抜いて斬り つけるなんて、正気の沙汰じゃない。 お家断絶、家臣を路頭に迷わせる結果しか招かないと解っている だろうに、あえてそれをする殿様も殿様だし、逆恨みとしか思えない 仇討ちに走る家臣も家臣で、それに喝采する無関係な大衆と来たら、 もう絶対的に理解不能の領域である。 「裏表忠臣蔵」『終章 ことの次第』によれば、 < [略]少し後に書かれた徂徠の「四十七士の事を論ず」では、 仇討(あだう)ちの行動を<その君の邪志を継ぐ><不義>と評して いる。 <義>から<不義>への徂徠の微妙な変化は、暴力的な四十七士 ブームの嵐(あらし)と無関係ではあるまい。太宰春台(だざいしゅんだい)が 「赤穂(あこう)四十六士論」で、四十六士が<怨(うら)むべ>きは<国家> (幕府)であり、吉良子(きらし)ではあるまい、と書いたのは討ち入りの三十年後 であり、世の上から下までが<いはゆる義士>をたたえること、三十年、一日の ごとし、と嘆いている。 事件直後に、同じ趣旨の激烈な批判をおこなった佐藤直方(なおかた)も、 <世俗雷同シテ、四十六人ヲ忠臣義士ト称ス>という怒りから筆をとっていた。 これらは、いわば、反時代的考察である。 幕府の処分そのものは、ほぼ筋が通っていたが、おおやけにされた時の大衆の 失望・怒りを考慮に入れて、バランスをとるために、吉良家と上杉家をも罰する ことにした。>(p194~195) ひとはいつも合理的に判断して行動するものではないけれども、正義はこちらに あると信じたとき、安心してバッシングに殺到する大衆規模のメンタリティは不変 のものなのか。 「裏表忠臣蔵」は絶望的で、優れた日本人論である。 第二次大戦も、オリンピックと万博好きも、小泉純一郎ブームや石原慎太郎と 橋下徹に対する熱狂ぶりも、みんな、このメンタリティの発現だ。 (新潮文庫 1992初 帯 J)
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by byogakudo
| 2012-08-02 14:28
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