2012年 11月 28日
click to enlarge 暗いのかしらと予想していたら、1970年代のフランス映画タッチ__ その頃流行りの風俗描写がほほえましい、佳作だった。原作が刊行された のは1983年だが、あのタッチはまだ続いていたと見える。 ブルジョア夫人が交通事故で死亡したと報道された直後に、事故ではなく 殺人だと告発する手紙が警察に届き、捜査が始まる。 ブルジョア家庭の住込みの女中さんは、若くて美人、女優志願。警察の事情 聴取の帰るさ、自分にタクシーをおごり、ほっとして車内で火をつける煙草が、 ポールモール。 彼女を調べたクレマン警部もポールモールを吸う。 外国製品に対するスノッブな愛好癖は、どこの国にもある。タイトルも中身も 忘れたイギリス映画の中では、「このネクタイ、イタリア製だぜ」と自慢していた。 ポールモールも、その口であろう。 車の名前も出てくるが、こちらは車に強くないので、どういう記号効果がある のか、よくわからない。 警察が聞込みに出向くブルジョア家庭の、それぞれの室内装飾や着ている服も、 手抜かりなくまめに記述され、ステイタスを示す。すぐさま映画にできそうだ。 タクシーの中でほっとする女中さんの描写なぞは、映像化し難いだろうが。 <クレマン警部は彼女の好みの男性のタイプに一致していた。態度が丁寧 (ていねい)で、好意的でさえあった。女性の美しさに対して抱いている 関心を隠そうとしなかった。いや隠し切れないでいたと言ったほうがいい。 男性と対する場合、いつもそうなるのだった。女性が社会を動かす日が来たら、 ジュリエット・エルバンには成功するチャンスはないにちがいなかった。>(p50-51) 妻を亡くしたブルジョア男性が、自宅で女中さんにかけさせるレコードが、 アルビノーニ。クレマン警部もアルビノーニがお好きなそうで、そういう雰囲気 いっぱいのミステリ。 (創元推理文庫 1985初 J) 2017年1月15日へ~
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by byogakudo
| 2012-11-28 13:17
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