1920年ころの中国、中華民国に暮す欧米人たちは、モームの
意地悪な目にどう映ったかが描かれる。
モームの人間観察眼はクリスティのミス・マープルを思い出させる。
故郷を離れ、異郷に暮すことでひとはどう変わるか。変わるまいとして
どんな無理を自分にしいることになるか。モームは見逃さない。
平等意識が強く、周りの中国人を自分と同じ人間として見よう、接しよう
と思いながら、彼らに直面すると黄色人種への嫌悪感が隠せない、真面目な
伝道師。
長く中国に暮しながら、一語も中国語を解さず、母国にあるときと同じ生活を
続けようとする官吏やその夫人たち。
どちらもその偽善やグロテスクさが指摘される。
階級社会の常として召使いと対等に口をきくことがありえないイギリス人・
モームは、ある宿屋でクーリーと屈託なく喋っている中国の役人を見て
ショックを受けた挙句、真の平等や民主主義は西洋がもたらすものではなく、
「汲み取り便所」の臭さに馴れきった(階級に関係なく、みんな便所の臭いや
風呂に入らない体の臭さを感じなくなっている)中国人の間にある、と喝破する。
風太郎あたりが言いそうな説でもある。
(ちくま文庫 1996初 J)
..... Ads by Excite ........