2013年 03月 30日
![]() (~3月28日の続き) 写真は阿佐ヶ谷住宅で。わたしは用事があったので、Sが昨日 ひとりで行ってお別れしてきた。もう工事のひとが入っていたと いう。お花見をしている家族もあったが。 風景は変わる。自然だけが風景を形作るのではない。50年代の 技術で表現された阿佐ヶ谷住宅も、丸型の郵便ポストも人工物で あり、風景を担い、ある時代の精神を象徴しさえする。 テクノロジカル・ランドスケープ。J・G・バラード「クラッシュ」に 頻出する言葉だが、頷ける。その通りだ。わたしたちを取りまく風景は、 この言葉で表現するしかない。ガラスとコンクリートを基調とする都市の 風景だ。 (話の都合上、当節の風景の主要素、新建材は除けて考える。近代風景を 成立させるガラスやコンクリートの廉価版であり、延長的な技術だから。) ひとは神の猿である。無意識裡に押し込められた観念ではあるが、何か 作り出そうとするとき、ひとは自然物を手本にする。 自動車は人体をさらに丈夫な皮膚で覆うものだ。内部にはひとの手足や 内臓器官にも似た構造が組み込まれる。自然が穏やかなときばかりではない ように、ひとの動きを補助し、守るよう仕上げられた車であっても、衝突事故が 起きた途端、それらは人体に衝撃を与え、生き延びたとしても事故の刻印が 肉体に残る。 陰惨で執拗な衝突事故の詳細が述べられるが、「ハリウッド・バビロン」や ウォーホル作品に教えられるまでもなく、ひとを惹きつけないではおかない 事故やできごとがある。悲惨な事故は被害者が有名人であればあるほど、 耳目を惹く。わたしたちはそれを享受する。 ダイアナ元妃の交通事故死は、わたしは彼女を全く認めていないけれど __あれはただの欲求不満のイケズだ。__彼女の肩書き故に、大衆に 大きな悲劇として、セクシュアルな輝きをまとって記憶された。 物語の終わり近く、語り手のバラードが、自動車事故による怪我で下肢 装具をつけた女と、身障者用運転補助具に囲まれた小さな車の中で性交 する場面に心惹かれる。おぞましさは消え、うつくしい。 衝突事故を福音として説く堕天使、ロバート・ヴォーンは、いわば弟子に 先回りされ、エリザベス・テイラーを巻きこむこともできず、衝突死する。 残されたもうひとりの弟子、物語の語り手であるバラードは、ヴォーンの 聖蹟を巡るように事故車両置き場を回り、福音を実践しようとする。次の 衝突事故死者として。 (創元SF文庫 2008初 J) 今週の新着欄です、よろしく。 新着欄
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by byogakudo
| 2013-03-30 15:39
| 読書ノート
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