2013年 04月 18日
お客さまから伊藤整「日本文壇史」はないかと聞かれて、 思い出した1冊。読んでるような気もする。もし獅子文六に 銀座で画廊を開く話がなかったら、これは既読本だ。 獅子文六が書きそうなプチブル家庭の物語で、どうせ覚えて いないから、再読も初読もありやしないが。 銀座・並木通りに洋品店を営む父55歳と、24歳の娘。妻で あり母である女性は一年前に病死した。昭和32(1957)年ころ だと、結婚適齢期という観念があまねく日本を覆っていたので、 娘はもう真剣に結婚相手を探さなければならない。 彼女は豊かな家の娘なので、料理教室や前衛生け花教室に通い ながら表向きは悠然と、内心、切実に結婚相手を探している。 アプレゲールな彼女は、ちゃっかり、パパに生命保険をもっと掛けて ほしいと頼むようなお嬢さんだが、父は、娘と同じようにしっかり者 だった妻を思い出させるので、いやがりはしない。 彼もまた再婚したら、させたらと、周囲から思われている。 父と娘の二つの結婚をめぐるコメディであり、高度経済成長へと 向かう時期の風俗小説でもある。 自宅は赤坂、麻布辺りの岡の斜面にある和風の二階建て。<庭は十坪 ほどしかない>とあるが、敷地全体で何坪だろう? 今なら大豪邸と 言われる。 並木通りの店には地下鉄で行くが、店の二階を画廊に改装中であり、 娘と前衛生け花の仲間たちは、そこを安く借りて絵描きグループとの 共同展覧会をやりたいと目論む。 画廊のオープニングパーティには、父の昔の絵描き仲間、今は画壇の 大家たちが来てくれる。いわく、<森猛><西郷赤児>。彼らの伝手で <鹿鬼之助><大林大作><蟹原木之助><吹沢二郎>たちも開いた ばかりの画廊に出品してくれる。 大林大作と吹沢二郎が、誰をもじった名前なのか解らない。 リアルな風俗を描き続けながら、後半はファンタジーになる。父と娘の 周囲にいる、醜いアヒルの子視されていた男女が、白鳥だったことが 明かされたり、二代に渡る愛情の交換が実現されたりしても、ちっとも 無理な展開でないところがいい。 ああ、シェイクスピア、読むべきだ、あたし。 (角川文庫 1964再 帯)
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by byogakudo
| 2013-04-18 14:54
| 読書ノート
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