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猫額洞の日々

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2013年 10月 03日

オレイニア・パパゾグロウ「ロマンス作家は危険」読了

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 なんとなく「クイーンたちの秘密」を手に取って少し目を通した。
オレイニア・パパゾグロウは、これより前の作品があったのを思い出し、
「ロマンス作家は危険」に切り替えた。こちらが第一作。

 ほんとは硬派のコラムを書いていたいが、それだけでは生活できない
のでロマンス小説で稼ぐ女性作家が主人公だ。
 ニューヨークで作家というキャリアを生きる女性たちの群像が描かれる。
それが"ロマンス"とカテゴライズされる分野であっても、作家たちは出版
業界の稼ぎ頭である。ロマンス作家や周辺の女性が次々に殺され、主人公は
疑わしい立場に立たされ、自ら身の証を立てなければならなくなる。
 ま、そういうミステリであるけれど、いちばん面白いのは、冒頭の
「『愛の炎』シリーズ出版のための手引き」だ。

 ロマンス小説作家志望の女性たちへ向けて書かれたガイドラインで、

<従来のロマンス路線よりもさらに濃密なロマンス、さらに激しい情熱、
 さらに詳細な官能描写を求める現代女性に的をしぼり、女性の日々の
 問題と可能性をそのまま映し出すスリリングな情況を背景に、生き生き
 した人間像を創り出していく方針です。>(p9上段)

ヒロイン 伝統的なロマンス小説のヒロインよりやや年上(二十五歳
 から三十五歳)。自分の世界に賭けを挑む活発な現代女性。没頭する
 仕事か、または少なくとも何物かに対する強い関心を持っていること。
 [以下略]

 ヒーロー ヒロインの相手となる男性は、すべての女性が夢見るような
 男性であること__大金持ちでないまでも現在の職業で華々しい成功を
 おさめており、ハンサムで意欲的で思いやりがあり、当然のことながら抗い
 がたいほどセクシーであること。年齢はヒロインより上の三十歳から四十五歳。
 [以下略]>(p9下段~p10上下段)

 以下、背景やラブシーン、プロット、文体すべてに枠組みがあり、その中で
ヒロインとヒーローの官能的な愛の物語を描くことが要請される。

 プロットについては、
<『愛の炎』が空想物語(ファンタジー)であることを忘れないでいただきたい。
 アルコール中毒、麻薬濫用、人工中絶、妻の虐待、インフレーション、慢性的
 失業、犯罪行為などの深刻な情況はふさわしくない。
 [中略]
 二人が互いを発見する課程の物語であること。筆者の仕事は、真実の愛が
 大いなる障害を征服し、やがて結婚で幕となる物語を書くこと。原稿の長さは
 約六万語程度。[以下略]>(p11上下段)

 そういう二人がせっせと愛という名の官能生活に励むソフトポルノみたい。
この第一章がおかしくて読み出したが、ミステリとしてはどうだろう。風俗小説
としては面白かったけれど。

     (HPB 1986初 帯 VJ無)
 





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by byogakudo | 2013-10-03 14:05 | 読書ノート | Comments(0)


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