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猫額洞の日々

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2014年 03月 28日

「和朗フラット」へ

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 むかし「スペイン村」と呼ばれた、Sが住みたかった集合住宅の
ひとつ(もうひとつが「同潤会代官山アパートメント」)、「和朗
フラット」の名残を求めて、昨日は麻布へ。

 前夜、web地図で見ておいたが所在地を書きつけるのを忘れていた。
地下鉄・大江戸線を下り、ぼんやりした見当で坂の多い街をうろつく。
鼠坂、三年坂、他、どれも急勾配でしかも長い。ここらの人は健脚家
にちがいない。

 麻布台1丁目辺りで、おしゃれな自転車屋さん青年に「古い洋館が
あるところ」という言い方で「和朗フラット」ないし「スペイン村」を
尋ねると、丁寧に飯倉片町方面へ戻るよう教えてくださる。

 ぶらぶらと麻布台1丁目を歩く。3-7の路地は砂利道だ! 日本郵政の
大きなダサいビルが崖の上。崖下にある路地の両側の戸建て住宅は、
空き家が多い。空き家の扉には決まって、
<立入厳禁。
 巡回警備実施中。
   森ビル(株)>のプレートが貼られている。ここも再開発される。

 3-2の路地は、砂利が地面に沈んで土が被さり草地になっている。
いちばん奥の木造平屋(!)住宅には洗濯物、その手前の向かい合う
空き家の壁に竿を渡し、お布団が干してある。
 布団を取り込みに出ていらした年配の男性に、挨拶してお喋りした。

 昭和三十年から住んでいらっしゃるそうで、この辺りは5・25に焼けた
跡に建てられた住宅だそうだ。戦前は一軒が300坪くらいのお家が並ぶ
お屋敷街で、戦後小分けされた跡が、
 「ほら、これ庭石でしょ」__平べったい大きな石は、たしかにそうだ。

 「区会議員で知ってるのがいるんだけど、[注:路地を]舗装してやろうか
って言うんだけれど、いいよって言ってるんだ。だってカエルがいるんだよ。
 そうそう、こないだ、アライグマだと思うんだけど、出てきてね。飼われ
てたのかなあ、妙に落ち着いてるんだ。猫を襲っちゃいけないから、ぶっ
叩いてやろうと鉄棒を持ち出したら、逃げられちゃった。住んでる人が
いなくなってエサがもらえなくなって猫も減っちゃった。
 ここらもあと2-3年かなあ」

 彼にも「和朗フラット」への道を尋ねると、飯倉片町交差点の地下道を
渡って行くのだと教えてくださる。
 「ここが和風の古い街なら、あっちは洋風の古い街で、あそこだけ焼け
なかったんだ。そうだ、江戸時代から続く庄屋さんの家も残っているよ、
ちょっと待って」と、お家に戻り、タウン紙「ザ・AZABU」をわざわざ
持ってきてくださった。お礼を述べて路地を出る。下町(地域を特定できる
耳がないのが残念)口調の、土地の妖精(グノーム)みたような方だった。

妖精(グノーム)のお宅の写真

 さて、無事に交差点を渡ったかというと、ここでもまた道を聞くことに
なった。若い山の手マダムに尋ねて、やっと通り過ぎてきたのがわかる。
彼女もとても親切だった。東京の人が冷たいとは一度も思ったことが
ないけれど、再確認。山の手であれ下町であれ、東京っ子の口調が
きつく響いたこともないし(こざっぱり、だと思う)、東京は冷たいという
のは都市伝説であろう。

 「和朗フラット」四号館へ。奥のやや男性的な作りは弐号館(と、あとで
確認)。Sがせっせと撮っている間に、ジンジャーキャットに声をかける。
 やっと着いたとぼんやりしていたら後ろから声がかかる。 
 「猫額洞さんじゃないですか。こんなところで何してるんです?」
 「スローガン」の熊谷氏だ!

 「『和朗フラット』の写真を撮りにきたんですよ」
 「うちも『和朗フラット』ですよ」と、背後の弐号館を指す。
 「なにーっ!」「なんですって!」
 「よかったら中も見て行きませんか、僕は今から出かけますけど」と、
スタッフの方に引き渡される。

 前夜はまさか、内部も見られるとは思っていなかった。残っている「和朗
フラット」だけ撮るつもりだったのに、望外の驚きと喜びが待っていた。
 暖炉まで白く塗られた白い室内、黒っぽい板の床(冬はエアコンをつけて
いても冷えたそうだ)、黒塗りの和式モデュール(?)で作られた低めの建具
(ドアや窓)を鑑賞する。長生きしてよかったなあ。住めなくてもまた訪れる
ことはできる。

 この日にお目にかかった皆さん、どうもありがとう!





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by byogakudo | 2014-03-28 19:47 | 雑録 | Comments(0)


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