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猫額洞の日々

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2014年 04月 20日

ジョン・ラッツ「深夜回線の女」読了

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(4月19日より続く)

 原作は1984年刊。アメリカではフェミニズムが社会に定着した時期
なのだろうか。フェミニズムの影響で男たちもマチスモからの解放を
望むようになり、セントルイスのひ弱な私立探偵、アロー・ナジャーが
造形されたのではないかしら。

 もちろん男らしさの神話は依然として続いている。惨殺現場を見るはめに
なったアロー・ナジャーの描写は、

< 一瞥をくれただけで、彼は後退し、台所に駆けこんで、すぐさま流しに
 へどを吐いた。力なく顔を上げ、冷たい水道水をだしながら、流しの世話に
 なったのは彼が初めてではないことに気づいた。
 [中略]
  数分後、ナジャーは流しに手をついた状態でやっとまっすぐ立った。情けなく
 なり、[中略]青白い顔をしているにちがいないと思った。震えだすような予感がし、
 そうはならないでくれと願った。青白くなったことによって、すでに男らしさが
 かなり失われているのだ。>(p146上段)

 神話は続いているがしかし、弱さの描写はマチスモ神話克服の第一歩だ。
男たちよ、男らしさ神話から自らを解き放て、というメッセージと捉える。

 男(たち)がマチスモから逃れようとしている半面、ナジャーに依頼した女と
その母は「男のいない女たち」とでも言うべきか__あー、村上春樹...勘弁だ
__、厳格な家父長制を実行しようとする、セントルイス物語である。

     (HPB 1968初 帯 VJ無)





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by byogakudo | 2014-04-20 17:43 | 読書ノート | Comments(0)


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