2015年 01月 09日
~1月8日より続く < おれは作家になりたいのだ、そうだろ? だったら、おまえはこういう こと以外にいったいなにをすればいいんだ? おまえは旅に出、観察し、 学び、ついにはヘミングウェイが言ったように、自分には書くべきことが あることを知る。 [中略] おまえは書くことによって、自分自身の小部屋でおのれの力強い思考力と 出会うのだ。>(p111~112) 砂漠のトラックサービスエリアで途方に暮れる主人公のモノローグだ。 彼は車に乗せてくれた男に誘われ、初めての外国、メキシコに入る。(カナダ じゃ、まだ外国ではない。)そこで酔ってけんかに巻きこまれ、目覚めたら 腕時計やお金がなくなっていた。乗せてくれた車に、大事なノートや身分証を 入れたバッグを預けていたが、車も、乗せてくれた男も消えている。 気を取り直し、同乗させてくれる人を探す。今度の男は、ラスヴェガスでの ボクシングの試合の、レフェリーである。男の推薦で主人公は、ロートル・ ボクサーの練習相手になる。 我が早とちり読解力によれば、作家という基本的に観察者であり、現場に 立ち会っても行動しない傾向にある自らに、罪の意識を抱きながらも作家で あることから逃れられない作家の物語、ではないかしら? と、早呑み込みするのは、最初の事件、刑務官殺しの際、主人公は仲間に 協力するけれど、直接の殺害はしない。そのことを気にして悪夢を見る。 次のボクサーとの交流でも、ボクサーが罠にかけられ破滅するだろうと分かった のに、紹介者であるレフェリーとの関係があるので、主人公は口をつぐむ。 ボクサーとの話の途中、教会に懺悔に行くシーンがある。牧師と神父が混合 する日本語訳だが、その神父ないし牧師から、 < 「人生は書物ではなく、あなたが行く先々で出会う人びともその章ではない のです。人生は現実であり、彼らも現実であって......」 [中略] 「二週間かけて、ロザリオ十五玄義について瞑想し、それらがあなたが体験 した事柄にいかなる解明の光を投げかけるか、考えなさい。それはあなたの 罪の償いではありません、そのための準備にすぎないのです」 [中略] 「決定的な時が来たときには、"ここだ!"と叫んで絶対にやらなければなり ません」>(p163~164)と予言的に言われる。 (ジョー・ゴアズ/坂本憲一 訳「路上の事件」 扶桑社ミステリー文庫 2007初 J) 1月12日に続く~
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by byogakudo
| 2015-01-09 22:14
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