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猫額洞の日々

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2015年 01月 19日

(1)岩本素白「素湯(さゆ)のような話」と(1)サックス・ローマー「骨董屋探偵の事件簿」併読

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 岩本素白は伊呂波文庫さんに教えられて読み、好きになった。端正な
日本語が気持よくて、しかし端正で凛としたスタイルながら、頑固で
偏頗で癖のある性格を、恬淡と述べる随筆である。こういう風に書けたら
なあと願わなくもないけれど、漢文脈欠如なので無理だ。

 素白は子どもの頃から地味で、一見、面白くもなさそうなものに惹かれた。
 『独り行く』には、子どものとき家にあった、絵双紙や小さい絵紙が入った
箱の中で、いちばん好きだった絵について語る。
 一枚の紙に線を引いて、上は竃から煙がなびく様子が墨一色で描かれた絵、
下には柴垣に梅の花が咲き、鳥追いが三味線を弾く立ち姿(梅と鳥追いにだけ、
ちょっと朱色が施されている)が描かれている。

 子どもが好むにしては、あまりに地味で小味だが、好きだったのだから仕方
ない。本人も、
<普通の人からすれば小さな事、何でもない事、つまらぬ事に却ってひどく心を
 引かれるのは、今の自分の心にもなお通じて居ることである。人の嗜好(このみ)
 や性癖というものは、決して一代や二代で出来たものではなく、謂わば世を重ね
 代を重ねたもろもろのごう(業)の末である。>(p23)
と認識している。

 でも、いい記憶力だ。絵を描いたり見たりすることが好きな子どもだったとは
いえ、彼の家もまた戦火に遭って、これらの絵を収めた箱もまた失われただろう。
子どもの頃に幾度となく眺めて、ほとんど"そらで"描けるから記述できる。

     (岩本素白「素湯(さゆ)のような話 お菓子に散歩に骨董屋」
     ちくま文庫 2014初 J)

1月20日に少し続く~

 岩本素白は新宿B・Oの半額棚・一割引で買い、同時に読み出したサックス・
ローマー「骨董屋探偵の事件簿」は、これは近所のB・Oの半額棚・二割引。
まともな古本屋になぜ行かない? それは割引セールやクーポンの罠に絡まって
いるから。

 サックス・ローマーは名前だけ知っていたが、読むのは初めて。オカルト探偵
みたいだが、「怪人フー・マンチュー」もHPBで読めるそうだ。

     (サックス・ローマー/近藤麻里子 訳「骨董屋探偵の事件簿」
     創元推理文庫 2013初 J)

1月20日に続く~





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by byogakudo | 2015-01-19 16:51 | 読書ノート | Comments(0)


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