2015年 01月 20日
~1月19日より続く サックス・ローマー「骨董屋探偵の事件簿」の原題は " The Dream Detective "。オカルティックな探偵で、本業は骨董屋の老人である。 犯罪現場に一夜寝て見る夢の中で、事件の様子を再現映像的に感受し、 謎を解決する。大抵、古いオブジェ絡みの事件で、その点でも骨董屋で あることが有利に働く。 夢見探偵、モリス・クロウの理論は、 <犯罪は周期的に起きるということ、あらゆる貴重な遺物にはそれをめぐる 犯罪の歴史があるということ、人の思念は不滅であるということ>(p103) と要約される。理論を裏づける細緻な補足事項は存在しない。 また、しがない老骨董商としか見えない名探偵だが、口を開くと、 < その場にいた全員が、警察官も含めて、不思議なほど強く彼に惹きつけ られた。>(p20)と記されるのみで、これ以上の説明はない。 貴族趣味、というよりプチブルの上昇志向に思えるが、モリス・クロウは、 <事件が彼の趣味や嗜好に合わない場合>捜査協力を断る。 < 「どこぞの不運な洗濯女の脳天を肉切り包丁でかち割った犯人を 暴くのに、霊力に対するわたしの鋭い感受性がなんの役に立つという のでしょう」>(p102)と、自負する。 殺人現場に顔を出すと、いつも、 < 彼は山高帽の内側から円筒形の小さなスプレー瓶を取りだした。 生え際が後退した広い額にそれを一吹きすると、バーベナの芳香が 部屋に満ちた。それから瓶を元に戻し、帽子を髪の薄い頭に戻した。 「ここは死人の臭いがしますのでね!」>(p19) 古風な名探偵ものである。 (サックス・ローマー/近藤麻里子 訳「骨董屋探偵の事件簿」 創元推理文庫 2013初 J) 1月21日に続く~ ~1月19日の続き 岩本素白「素湯(さゆ)のような話」も気持よくよんでいるが、サブタイトル 『お菓子に散歩に骨董屋』は、わたしのような老読者にはありがたくない。 なんというか、雑誌でいえば「ku:nel クウネル」とか「relax」とかを思い出さ せて、若い人々は疲れ過ぎていて、ほんとに癒しやゆとりやくつろぎや「まったり」 した感覚を欲しているのかもしれないが、垂直性に共感する老人には、やすらぎの 強制に感じられて辛いものがある。 (岩本素白「素湯(さゆ)のような話 お菓子に散歩に骨董屋」 ちくま文庫 2014初 J)
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by byogakudo
| 2015-01-20 17:59
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