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猫額洞の日々

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2015年 01月 23日

鈴木創士「文楽かんげき日誌」第10弾「阿呆鳥」/Pierre Barouh/佐藤春夫「小説永井荷風伝 他三篇」

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 写真は、昨年末に行った"Pizzeria b"の一階。
 "Pizzeria b"は一日一組だけの営業形態に変わった。あの空間が続く
ことになって、うれしい。


 鈴木創士氏、今年初めての「文楽かんげき日誌」は「第10弾 阿呆鳥」

 近松の辞世文を語った後、
<なんとも言いようがありません。かっこいいでは済みません。
 これが畢生の作家が書いた第一級の辞世であるとしなければ、
 なんなのでしょう。そういうわけで、私は近松門左衛門のファン
 であることを認めないわけにはいかないのです。>
と結ばれるが、<歴史=物語は破綻する>近松について書き記す
氏の文体が、なんとも<かっこいいでは>済まされない。必読!

 雨の日に、頼んでいたピエール・バルーのCD「VIVRE~生きる」が届き、
数十年ぶりに聴いた。昔は彼の歌声ばかり専ら聴いていたので、アレンジに
驚く。60年代後半から70年にかけてのフランシス・レイ、タッチで、オルガン
の使い方や軽くジャズっぽい切り替えなど、あの時代が立ち上がる。
 "MONSIEUR DE FURSTEMBERG"の"STEMBERG""の辺り、半音ちがえて
覚えていたし、曲と曲の合間の無音は、こんなに短かった?

 ピエール・バルーを聴きながら佐藤春夫「小説永井荷風伝 他三篇」を読む。
なかなか似合う。

 関東大震災の翌年か翌々年、散文作家・佐藤春夫になって10年くらい
経った頃、佐藤春夫は「山形屋ホテル」(正しくは「山形ホテル」)に
缶詰になる。そこで慶応義塾の恩師、荷風と再会し、ホテルに近い偏奇館を
そっと見に行く。
 
< 家は目測二十五坪前後、長方形の総二階で、もとは水浅黄か何かの
 ペンキらしいのが色褪せて今は灰白色のところどころが、少しく剥落
 した南京じたみの横板を重ねたもので、その全体の感じや二階の
 窓わくのつくりなど、すべて明治初期の木造洋風建築の様式に則った
 もののようである。>(p27)
 <目測二十五坪前後>が建築小説作家(と、わたしは思う)佐藤春夫の
面目躍如だ。

     (佐藤春夫「小説永井荷風伝 他三篇」 岩波文庫 2009初 J)

 山形勲に生家である「山形ホテル」について、もっと詳しく訊ねた人は
いないかしら? 役者に本業以外のことをしつこく訊ねるのも失礼だが。
 「東京さまよい記 山形ホテル」という文学散歩記事がある。浜田研吾
「脇役本―ふるほんに読むバイプレーヤーたち 」には、山形ホテルの
思い出話などは出ているだろうか?





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by byogakudo | 2015-01-23 15:32 | 読書ノート | Comments(0)


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