2015年 02月 09日
~2月8日より続く 昭和26(1951)年6月14日(木)、山田風太郎は探偵小説が <文章の稚拙さ>や<表現の素朴さ>故に批判される事態を 変革しようと、 <探偵小説における漢字制限を提案する。つまり探偵作家が メッタヤタラに使用する「恐」「怖」「神」「秘」「魔」「鬼」 「奇」「妖」「怪」「呪」etc.の原始的、中世的の文字を禁ずる ことである。 漢字以外の形容詞(?)としてこれまたメッタヤタラにばらまか れる「ゾーッ」「ゾクゾク」「アア」「ドキドキ」「オドロオドロ」 「ギョッ」「ギャッ」というような騒々しい突破的片仮名もすこし へらしてみたらどうだろう。>(p79) というわけで、横溝正史の諸作品から禁止漢字と禁止形容詞の使用 箇所を全部ピックアップしてみせる。 『本陣殺人事件』からは88カ所、『陰獣』は156、『刺青殺人事件』 では129カ所の頻出ぶりである。 風太郎は何カ所かはカウントせず、例文を上げているだけなので、 ちょっと数えてみた。数え違いがあるかもしれない。 <「何んともいいようのない、恐ろしい、血なまぐさい光景」>と、 一文に数個含まれていても一箇所である(p80~84)。 月毎の章立てで構成され、章の始まりには日記と同月のニュースが 記される。1951年8月は、22日<講和会議全権委員六人を任命 (首席吉田茂)>とある。 8月10日(土)より引用。 < <文藝春秋>九月号求む。記事中一寸寸感あり。 (1)「敗戦後の混乱期に不用意に行われたり、当時の国際情勢に 影響されたり、或は更に、外国の制度をうのみにしたり誤解され たりして行われたような改革は更(あらた)めてこれを適当に変えて ゆかねばならない」__(船田享二「珍勲記」) [(2)、(3)略] (4)「六三制をやれといって勧告したアメリカ人の気持というものは、 制度としていいからやりなさいと言ったにちがいない。しかしこの 場合、制度としてはいい、いつかやりますが今はやれませんという ことを具体的に説明し得なかったということは、一つの非常な 失敗だ」__(白洲次郎「日曜日の食卓にて」) [(5)、(6)略] (7)「アメリカは国が若くて、いまだ国酒を生み出すほどに伝統がなく、 二千六百十一年の歴史をもつ国の酒に匹敵するものはなにも持って いない」__(井上勇「わが対酒三原則」) 日本のジャーナリズムの敏感さ、まさに嘆賞すべし。講和は一ヶ月の のちに迫ったのである。それぞれ当人のいってることはまじめであり、 真理であり、当然なことでもあるのだが、しかしそれだけに日本民族性 のお手軽なオッチョコチョイ性が軌を同じうして現われていて恐ろしい。 この大敗北で日本人はどれだけ反省したか。(この反省というのは アメリカのいう「悪」の反省ではない)もッともッと徹底的な自虐性が 必要なのである。__しかし、敗(ま)けても勝っても頑然毅然(きぜん) 傲然としているドイツ人は恐るべきであるが、やはり日本人はまねられ ない。結局まねても猿真似だから、このようにアッサリうれしがる民族性 の方が幸福かもしれない。>(p133~135) (山田風太郎「戦中派復興日記」 小学館文庫 2014初 J) 2月10日に続く~ ______________________________ 木村太郎は微温的でピント外れなことばかり書くライター?ジャーナリスト? だが、2月8日付け「東京新聞」のコラムは、同感した。 『外交官本来の仕事』とタイトルして、 < 多少海外で生活してきた経験から言わせてもらうと、日本の外交官 たちは必ずしも「邦人保護」を本来の仕事とは考えていないと思わせる 節がある。華やかな社交の場では目につくが、安全に関わるような情報が 渦巻く裏世界で日本の外交官の存在を感じたことはない。> 一度でも外国に行ってみれば、日本の大使館は明治以来の伝統であろうか、 税金を使って鹿鳴館生活(宮廷ごっこ、あるいは王様ごっこ)に耽るところで、 自分と同じか上の階級に属する人なら相手にするが、それ以下の下々邦人は 目に入らず、下々の困りごとは、民間の下請け機関(かつては東京銀行やJAL の支店)に任せている、と肌で感じる。
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by byogakudo
| 2015-02-09 17:03
| 読書ノート
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Comments(2)
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saheizi-inokori at 2015-02-09 22:46
風太郎、読みたくなりました。
木村太郎も読みました。 同感です。
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byogakudo at 2015-02-10 12:25
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