2015年 04月 27日
フランスのミステリと英米系ミステリは、どうしてこんなに肌合いが ちがうのだろう。ミステリなので謎があり、謎は合理的に解明されるの だけれど、"合理性"や"論理性"といった言葉の解釈、語義が英語と仏語 とではちがうのかしら、という思いに駆られるジャックマール&セネカル 「『そして誰もいなくなった』殺人事件」だった。 そういえば店の裏にHPB「グリュン家の犯罪」があったような気がするし、 背ヤケした「『風と共に去りぬ』殺人事件」もレジから見て左側2番目の棚の 下から2段目の裏(2列に並べていた奥のほう)にあったように思うが、どちらも 読まなかった。ささま書店の均一台で「『そして誰もいなくなった』殺人事件」 を見て、著者名が記憶に引っかかって買った。 クリスティ「そして誰もいなくなった」の戯曲版がパリの劇場で公演された さなかに起きた上演劇そっくりの大量殺人事件が、難を逃れた老優の手記 の形で語られる。フランス演劇界の話、癖の強い役者たちの話、それぞれに 面白く、いわば普通小説の部分が長くて楽しかった。謎解きミステリ・ファン なら、さっさと話を進めないかと苛々するかもしれないが、風俗小説を楽しむ 人なら、この長い長い脇道を喜ぶだろう。脇道の果てには、唖然とするような 謎の解明が待っている。そこがむしろ付けたしに感じられるのが、フレンチ・ ミステリらしさ、であって(?)。 (ジャックマール&セネカル/矢野浩三郎 訳 「『そして誰もいなくなった』殺人事件」 集英社文庫 1983初 J)
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by byogakudo
| 2015-04-27 16:19
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