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猫額洞の日々

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2015年 05月 12日

三國一朗「鋏と糊」を読み始める

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 写真は5月5日の江戸川橋行き(?)のときに。あの日は湿気が
なくて、ほんとによかった。

 先日読んだ三國一朗「肩書きのない名刺」に気になる一篇が
あった。言葉や本について書かれたものを集めた第二章中の、
『印刷物偏愛者の新聞切抜き』というエッセイだ。
 新聞切抜きというと情報処理のジャンルにされがちだが、三國
一朗のそれは趣味的な世界らしい。抽象的にそう述べられている
だけだ。気になる。
 一冊になった「鋏と糊」(ハヤカワ文庫NF)を読んでみよう。

 まだ助走に当たる部分(P44)だが、三國一朗は本や新聞などの
印刷物に畏敬の念を抱く祖父母に育てられた。それがやがて彼の
小紙片愛に結びつく。

 三國一朗は名古屋で育った。5、6歳の頃、「ぱんぱんこ」を遊ぶ。
 おそらくマッチ箱に貼られる前のマッチ・ラベルが横流れした紙切れ
であろうが、
<きれいな色どりや、風変わりな図案で飾られた可愛らしい紙片を数枚
 縁側に並べ、かわるがわるそのそばで両手を「ぱんぱん」と鳴らす
 のです。その拍手で起きる風で、何枚の「小紙片」をウラがえしに
 することができるかを競う遊びが、その「ぱんぱんこ」であり、幼い
 私たちは、その小紙片のことも同じく「ぱんぱんこ」とよんでいました。>
(p35)

 小紙片への愛は次いで、時代劇スターのミニ・ブロマイド集めに代わり、
< 「小紙片愛」はかくて映画への傾斜とむすびつき、映画館でくれる
 プログラムに、霧を吹きアイロンをかけて秘蔵するという境地にまで
 進展した>(p36)けれど、思春期に、異性への思慕に取って代わられた。
長じて仕事を通じて復活を遂げるまで、「小紙片愛」は伏流的存在、長い
眠りに就く。

     (三國一朗「鋏と糊」 ハヤカワ文庫NF 1987初 J)

5月13日に続く~





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by byogakudo | 2015-05-12 15:46 | 読書ノート | Comments(0)


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