2015年 07月 22日
「20世紀イギリス小説個性派セレクション3」はマックス・ビアボーム。 ズリイカ・ドブソンというのがヒロインの名前だが、ズリイカ?! 綴りは Zuleika。 なんの根拠もなくハンガリーとか、あの辺りの名前に感じられるけれど、 オックスフォードの学寮長の孫娘にして美貌の奇術師。彼女の行く所、 若い男たちは文字通りバタバタと倒れて、愚かしくひれ伏し崇め奉る、 冗談のような存在。 彼女に照応する、もうひとりの冗談のような存在が、オックスフォード の大学生にして独身主義のダンディ、ドーセット公爵。美貌と富と地位と 頭脳と、全部備えた、少女漫画のヒーローにすら与えられなかったような、 美点だらけでできた男。 彼女は彼が一瞥もしなかったことで彼に恋し、女性を忌避してきた彼は 彼女に一目惚れする。独身原理主義者なので、思いを振り払おうとするが うまくいかない。しかし、彼が彼女に恋したことを知ったズリイカは(彼が なびかないから憧れたのに!)彼を拒絶する。 こういう前提なら三島由紀夫もどきに、ふたりが互いにそっぽを向きながら の交互に詠唱するシーンをちりばめ、近代の自意識満開の心理小説になりそう なものを、どうも勝手がちがう。ズリイカの真珠のイアリングが、互いの思いを 反映して色が変わるなどと書かれている。これも文字通りに飲み込むしかない 書き方なので、寓意的なファンタジーに進むのかとも思うが、よく分からない。 どうするつもりだ、マックス・ビアボーム? (マックス・ビアボーム/佐々木徹 訳「ズリイカ・ドブソン」 新人物往来社 2010初 帯 J)
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by byogakudo
| 2015-07-22 21:25
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