2015年 11月 20日
~11月19日より続く わたしは小説を読むのは、わりと速いほうだが、それは速く読ま れるべく書かれている小説だからそうなるだけで、読者もまた観察 に参加するかのように注意深く読まれるべき小説が対象なら、自然、 ペースは落ちる。 "お話"的要約を拒む小説であり、昨日書いたように、一文が、 接写された一枚の写真のような文の連なりなので、集中する眼差し と、ときにそこから視線を外して、それまで読んできた箇所を思い 出すこと、どちらも必要だ。 読み終わっての感想は"死の舞踏"だが、乾いた骨がつながって踊る 映像(イメージ)ではない。 たとえ即死だったとしても、死の徴候は緩やかに訪れる。そのまま 放置されれば、かつての生体は少しずつ腐敗の度を増す。蛆が発生し、 死骸から滲み出す粘液にまみれて、死骸自体が崩壊していく。 粘液は死による崩壊過程に滲み出るだけでなく、そもそも生命の 誕生時から、羊膜液の破水があり得るではないか、まるで誕生の後に 続くのは死であると、予告するかのように。 死んだからって、漂白された乾いた存在である死に到達するまでには、 粘液質の崩壊過程が避けられない。べとべとした大洪水を待たなければ ならない。憂鬱なことである。 そういう粘液質な話が、あくまでも乾いた文体(翻訳は、そう感じる) で綴られる。主人公(記述者)が明晰さを保つために、いつも読み返す ボシュエ『棺前説教集』を、わたしが知らないのが残念だ。小説世界との 対比が鮮やかなのだろう。 フランス語のテクストを読み、テクストに忠実な日本語訳を創りだそう とする翻訳者たちを想像してみようと思うが、それだけで思考は停まる。 彼らの献身、眠られない夜、焦慮の昼、歳月...。すべてに感謝する。 (ベルナール・ラマルシュ=ヴァデル/鈴木創士・松本潤一郎 訳 『すべては壊れる』 現代思潮新社 2015初 帯 J)
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by byogakudo
| 2015-11-20 16:30
| 読書ノート
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