タイトルの『父 吉田健一』は、ジャケットでは"父"と"吉田健一"の
間が少し開いている印象だが、目次と奥付では『父吉田健一』と、くっ
ついている。どっちにしようか迷ったが、読みやすいように、半角開け
にした。
第一章『まっすぐな線__父のこと』に、娘が大人になって、一緒に
お酒を飲んだ夜のことが書いてある。
ヴェルレーヌの詩を、
<父は何度も繰り返して、響きの稀な美しさに浸り、問いかけていた。
その晩は父も私も静かな心持で、何も言わなくても時間は流れていた。
二人がそれぞれ二階に上って、私は父が寝に行ったものと思っていたが、
やがて父が書斎から出てくる音がして、私の部屋のドアの下に何かが
差しこまれた。見ると紙切れで、ヴェルレーヌの詩の十四行が書かれて
いた。この紙切れは私には宝で、パリに勉強しに行った時も持っていった
はずで、どこかに紛れてしまったのはパリでだったろうか。>(p17~18)
(吉田暁子『父 吉田健一』 河出書房新社 2013初 帯 J)
11月25日に続く~
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