2016年 02月 13日
~2月12日より続く いまだ相変わらずシェイクスピアを読んでないので、主人公が乗り込む 船の名が"キャリバン"号であるのは、ストーリーと関連があるのだろうと 思っても、どんな関連なのか解らない。 船旅の間ずっと、主人公、ギルバート・ピンフォールドは幻聴の登場人物 (分身)たちの声に悩む。何人もの幻聴の存在のひとりに"ゴヌリル"と綽名 したのは、読んではいなくてもリア王の、いけずの娘、くらいは解るけれど。 これは、イーヴリン・ウォー流のメタ・フィクションなのかしら。分身たちは 主人公である小説家・ピンフォールドに向かって、ないこと・ないこと尽くしの、 当てこすりやほのめかし、罵倒を繰り返す。 戦時下の暴力を思い出させるような残虐行為(ラジオドラマのように音声 のみ)や、自己否定を強いる分身たちの声が、リアルにくっきりと記される ので、主人公には、なにか心やましいことでもあるのだろうかと、ふと下手な 俗流フロイディズムが頭をよぎるが、そうじゃなくて、実際の登場人物も、 主人公の分身たちも、小説(フィクション)の中では公平に(?)フィクショナル な存在であり、小説(フィクション)とは、言葉で記述された事柄・できごとで あると語る、メタ・フィクション、なのかなあと、いまのところ思う。 (何かもっとピントの合った言い方を思いついたら、"今週のホイホイ"枠で 書き継ぐことにして。) 『ピンフォールドの試練』は『1 中年の芸術家の肖像』から始まり、最終章 『8 ピンフォールド氏の回復』で円環が閉じられる。 中年の小説家、ギルバート・ピンフォールドは、分身たちとの闘争に打ち勝ち、 自宅の書斎に戻る。そこには書きかけの原稿が待っているのだが、 <今はもっと緊急を要する仕事があって、自分が経験したばかりの豊かな 材料は、ほうっておけば駄目になる心配があった。 彼は原稿の束を引き出しにもどし、新しい大判用紙を一帖、自分の前に 拡げて、彼のいつものしっかりした筆跡でそこに、 ピンフォールドの試練 1 中年の芸術家の肖像 と書いた。>(p239) (イーヴリン・ウォー/吉田健一 訳『ピンフォールドの試練』 白水uブックス 2015初 帯 J) (1)イーヴリン・ウォー/吉田健一 訳『ピンフォールドの試練』 (2)イーヴリン・ウォー/吉田健一 訳『ピンフォールドの試練』
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by byogakudo
| 2016-02-13 21:19
| 読書ノート
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