2016年 05月 24日
写真は、ご存知(?)、高円寺のルキュリオ、ショーウィンドー。 楠森總一郎氏から、糸井重里に木造モルタルの王国という言葉がある と教えていただいたが、日本近代のアンダーグラウンド文化は、まさに そこに育った。そこで夢見られた。 『鹿鳴館の思想』が立身出世主義の別号として大文字で印され、モダーン 日本の公的表面を覆ってきたように、"木造モルタルの王国"もまたそれなり に、底流ないし伏流としての歴史を担う。 メイジャー・シーンである鹿鳴館や銀座は、煉瓦で堅く構築され、室内も 堅い木の鏡板や寄木の床だ(やわらかい漆喰や壁紙も用いられるが、メイン は堅い素材だ)。 西洋直結、できる限り、本家本元に近づくことが正しい在りようとされる。 (銀座は、日本でいちばん西洋に近い場所とされたが、銀座もまた、東南 アジアの植民地の街並より本格度は劣り、本場・オリジナルな西洋は常に 逃げ水である。) かたや、鹿鳴館思想の廉価版・安直な普及版である木造モルタルは、 外壁からして優しい木肌(に防火用モルタルを塗り)、内壁もあくまでも 柔らかい肌、漆喰塗りで包まれる。 それはもはやビルヂングともアパートメントとも呼ばれない。西洋と いうオリジナル(受容したその時・その場がオリジナルと捉えられている だけで、歴史性すらない)が日本風にアレンジされ、変形された、アパート、 下宿、しもた家。大衆の住まいである。 しかしそこで初めて個室の思想が具体化し、『夢みる部屋』が出現した。 本格的とされるもの、本物と称されるものより、にせものを好ましく思う わたしの偏向性もまた、木造モルタルの王国の産物だろう。 先だってお風呂に入っているとき、"木造モルタルの王国"で接着される、 日本の近代=にせもの性=翻訳文化愛好、というラインがきれいに繋がる 思想(? いや、思想でいいんだ!)が思い浮かんだのに、いま書いてみると、 うまく繋げられない。 いつかまた試みることにして、坂口安吾『肝臓先生』も、日本の近代 (でドタバタ・アクセクした男たち)の群像図である、観念小説集だ。 『魔の退屈』、『私は海をだきしめていたい』、『ジロリの女』(『罪と罰』 の短篇化とも感じる)、『行雲流水』、『肝臓先生』。寓話的に語ることが、 リアルな運動性を喚起する書き方だろう。 (坂口安吾『肝臓先生』 角川文庫 1998年3版 J) ああぁ、ちゃんと連結できなかった。ちぇっ。
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by byogakudo
| 2016-05-24 22:11
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