2016年 06月 13日
本棚を見たら、単行本のウッドハウスは、国書刊行会版で3冊、 文藝春秋社版が2冊、並んでいる。翻訳・出版された一部に過ぎ ないが、日本語訳の読み較べも、やろうと思えばできる。いま、 その熱意はないけれど、文庫末の『訳者付言』に『世界大ロマン 全集』乾信一郎 訳の話が出てくると、読んでから店の棚に出すん だったと少し血が騒ぐ、いや、後悔する。 いつも主人公、バーティを困らせるビンゴ・リトルの愛読書は、 <どんな馬もレース前に最低十回は出走妨害を受けるらしい>(p50) 競馬小説であり、ビンゴの生活費を握る堅物の伯父さんは、なぜだろう、 血縁だから?、こちらはハーレクイン・ロマンス風・大衆小説の大ファン である。 この1920年代版ハーレクイン・ロマンスは、女流作家名もタイトルも、 いかにもなネーミングで、ロージー・M・バンクス著『全ては愛のため』 『一介の女工』『向こう見ずのマートル』『全てを賭けた女』『マーヴィン・ キーン、倶楽部の男』『かつて五月に』などなど。 作家、ロージー・M・バンクスは、 <「[略]臨場感が出ないと、筆が進まないの」>(p235) <最近は、小説で大衆受けを狙うなら、現場の雰囲気をうまく出さなく ちゃならない。読者はうるさくなってきている。何でも知りすぎるほど 知っているからね。シーンの設定がいいかげんだと、あっという間に ちょんぼをやらかして、多くの読者から「前略、どうやらご存じない ようですが__」と苦情が舞い込むはめになる。>(p235) 1920年代イギリスのエンタテインメント事情は、いまと大して違わない。 どたばた短篇集だが、どんなに混乱を極めた状況であっても、主人公・ バーティの召使、ジーヴズに任せれば、快刀乱麻、みごとに着地する。 映画『召使』のコメディ版、いや、ドン・キホーテとサンチョ・パンサの 昔から、召使は主人に対して批評家であるのが典型というもの。 (P・G・ウッドハウス/岩永正勝・小山太一 訳 『ジーヴズの事件簿 大胆不敵の巻』 文春文庫 2013年4刷 J)
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by byogakudo
| 2016-06-13 17:32
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