2016年 07月 02日
主人公バークが、インディアナから戻ってきた。ニューヨークに戻ると、 ふたたび地獄の日常が、淡々と始まる。 < おれがインディアナで手にしたもの__家族の絆の短期リース契約 __はもう消滅した。おれは地元に戻ったのだ。[略] ラジオをニュース専門の局に合わせてみた。自分の赤ん坊を殴り殺した うえで切り刻み、シェパードに食わせたやつがいる。当局がその後始末 をした。犬は殺された。>(p101) メイン・ストーリーは、性的虐待を受けたトラウマから多重人格になり、 ある人格のとき赤ん坊を殺した少年、ルークをどう救うことができるか、だ。 サイドにニューヨーク地下世界の様相が描かれ、いくつかがバークに関わって くる。巫女が統べるヴードゥーの社会、銃の密売組織その他。 ルーク少年の話の背景に見えてくるのは、バークの子ども時代だ。ルークの 物語を語りつつ、バークの幼少年期を描いているのだろうが、プロットに次の プロットが重なり、登場人物が輻輳し、なんだか話がごたごたして、あんまり うまく行ってない。エピソードを連ね、互いに反響させて、重層的に語ろうと したのは意欲的だけれど。 ご贔屓のミシェルが今回も不在だが、銃の密売組織から派遣された、見習い 兼ボディガードのクラレンスが、いい味。 (アンドリュー・ヴァクス/佐々田雅子 訳『サクリファイス』 ハヤカワ文庫 1997再 J)
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by byogakudo
| 2016-07-02 16:50
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