2016年 10月 15日
数十年前に読んだときは、世界と接触できないのは、わたしだけ じゃないことが確認できて、そこに惹かれたのだろうと、数十年を 経て再読した今、思う。自分の孤独を抱きしめてもいいのだと、許可 を得たかのような思いで読んだのだろう。いまではこの本とも、その ときのわたしとも、そう認識するだけの距離ができた。 世界は相変わらず遠いけれど、だからといって遠さや接触不能性に 悩むことはない。それは遠い、だけ。わたしは、しょうもないわたしと つき合わざるを得ない、だけ。二つをごっちゃにすることは、しない。 時間が、老いが、それを可能にする。 (ドリュ・ラ・ロシェル/菅野昭正・細田直孝 訳『人間の文学 8 ゆらめく炎』 河出書房新社 1967初 J) 大昔に読んだのは、1980年刊のソフトカヴァ『河出海外小説選 33』 の方で、今回は、山下菊二の挿絵入り・ハードカヴァ。 なんだか丈夫そうな絵だ。ジャケットの Humanite という文字は、 たしかに人を求める物語なので、なるほどと思えるが、あの絵は、 ちがうだろう。 ドリュ・ラ・ロシェルは主人公に寄り添う形で叙述しているので、 それに対して批評的であろうとして、タフで戯画化した絵を添えた のかもしれないが、これはタフになりたくともなれないし、なることを 拒否する男の物語だ。 『空っぽのトランク』も一緒にして、新訳で文庫本で出ないかなあ。
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by byogakudo
| 2016-10-15 22:56
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