2017年 07月 28日
![]() 『東京夢幻図絵』は戦前の東京風景を描いた連作短篇 ミステリ集だが、『哀愁新宿円舞曲』は昭和30年(1955年) 前後の新宿が舞台の、ミステリというより情話集だ。あのころ の新宿への郷愁に満ちる。 『娼婦の町』や『歌舞伎町夜景』は、娼婦群像だ。足を洗って その後おだやかに過ごしている例も、たまにあるようだが、 大抵は疲れ果てて哀れな末路だ。 哀れなのは女たちだけではない。いまのソープランド、当時の トルコ風呂に行った男の話も哀れである。 『トルコ・コーヒー』の主人公は気弱な中年会社員だ。 < やたらに人見知りをするたちで、[略]ひと前では意見も のべられない。[略]いつもよりよけいに酒を飲んでも、安直な 飲屋のすみで、子どものころの流行歌を、はた迷惑にならない ように、口ずさむのがせいぜい>(p298) __そんな男に、たまたま妻の知り得ないお金が入った。たまたま 電車の窓からトルコ風呂のネオンサインが目に入った。 勇躍、登楼したが、彼についた若い女が、どうも初手から調子が おかしい。 動作が妙におそい。何か言って <笑顔になるまでに妙に手間がかかった>(p296)りする。 <あまり、まばたきをしないのと、短い言葉に甘ったるい節が つくのが、ちょっと気になっただけ>(p302)だが、 彼女の動作はさらに緩慢になる。 彼の浸かっている湯に入ってきて、そのまま沈みそうになるので、 抱えて浴槽を出る。ますます身体に力が入らなくなり、倒れて頭を 打ちそうになるところを、危うく支えてやる。 彼女は普通のひとの時間速度ではなく、麻薬時間の速度で生きて いるらしい。 何かしてもらうために入湯料を払ったのに、身体を拭いてやり、 ベッドに横たえてやり、何やかやと彼女の世話をする破目になる。 スラップスティック譚であるが、彼女の緩慢な麻薬時速に合致した ゆっくりしたタッチで記されているので、却って彼の悲哀に共感できる。 遅いテンポをキープしながら書けるって、すごい。 (都筑道夫『都筑道夫コレクション<青春篇> 猫の舌に釘をうて』 光文社文庫 2003初 J) 7月29日に続く~ 呪 亜屁沈臓/呪 共謀罪=ネオ治安維持法/呪 吐爛腐/ 「共謀罪」法施行 警察監視の独立機関が必要 法律家ら提言 共謀罪強行成立記念! 安倍政権の暴挙を忘れないために振り返る 「共謀罪トンデモ答弁・暴言録」 【票を入れるな危険】日本会議所属の都議候補一覧 小池百合子氏 日本会議“本流”から外れた愛国者 「共謀罪」法 衆参両院議員の投票行動 上記のPDF
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by byogakudo
| 2017-07-28 20:59
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