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猫額洞の日々

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2017年 10月 01日

(3)J・G・バラード/柳下毅一郎 監修『J・G・バラード短編全集2』読了

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~9月28日より続く

 ヴァーミリオン・サンズは富裕層のための(そして富裕層
に提供できる技術や資質をもつ人々が)集まる、隔離された、
スノッブなリゾートだ。秘儀的な社交界が(シーズン中に)
砂漠に出現する。

 同じく砂漠であっても、『砂の檻』(中村融 訳)のケープ・
カナヴェラルは見捨てられ、社会からは隔絶状態にある砂漠
地帯だ。宇宙への憧れと商業主義が結びついた街(別荘や五つ星
ホテルが建ち並び、酒場が賑わっていた)が、火星から運ばれた
土の中のウィルスに汚染され、放棄された。

 砂に埋もれた街の跡に、三人の中年の男女が隠れて住む。

 火星都市植民地の設計事業の受注に失敗した建築家。
 発射台のテスト中の事故で死んだ夫の遺体を載せたまま、
軌道を回り続ける人工衛星を見守るために、星の棺に出会い
続けるために、汚染された砂漠を選んだ、宇宙飛行士の妻。
 宇宙飛行士のテスト・パイロットだった男は、
<秒読み最後の"一時停止"の直前におじけづき、[略]五百万ドル
 近くの損害を会社にあたえた>(p199下段)過去がある。

 三人とも地球の外へ、火星へ憧れ、挫折した。

 火星のウィルスは植物にだけ影響し、
<動物宿主には無害だったので、その影響はウイルスを運んで
 きた元の黄土のある狭い地域内にかぎられていた。ただし
 ウイルスが人間の臓器に摂取され、宿主には無害で気づかれ
 ないまま、腸内細菌と共生した場合は、土に還ったとしたら、
 ケープ・カナヴェラルから何千キロもはなれた土地の植物をも
 全滅に追いこむはずだ。>(p210下段)

 すなわち、秘かに隠れ住む三人は保菌者である。社会の安全を
妨げる危険な存在なので、捕獲され、隔離され、一年間の治療を
受けるべき対象だ。
 砂漠の周囲にはフェンスが建設中であり、完成したら、もはや
"保留地"から出ることは許されない。投降するなら今しかないと、
最後通告を受けている。

 原作が発表されたのは1962年だが、後年のHIV問題を思い出す。
治療法が確立できていなかった1980年代後半だったか、アメリカの、
お金のない麻薬中毒者がストリートで死を待つしかなかった頃、社会
主義国・キューバでは強制的な隔離政策が取られ、拘束はされるが、
少なくとも当時のできるだけの治療は受けられた。

 リベラリズムの平等性と自由の限界性とが、極限的に接触しようとする
地点の問題でもあるが、それでも、のたれ死にを強制する社会よりは、
拘束をしても、ひとを生きさせようとする社会を望む。なぜなら、ここでは
取りあえずの生の後に、自らの死を選び取ることも可能だが、前者では
ひたすら死を待つしか選択肢がない。

 小説に戻ると、楽園に入れなかった人々が、それでも、彼方を目指した
という事実は存在する。汚染された火星の土に覆われた砂漠の中で、保菌者
である彼らが、夢見る存在であり続けようとした事実は奪えない。
 同時に、大多数にとっての不穏分子であることも事実なので、彼らは
防護服に身をかためた監視隊員から、投げ縄で捕獲される。狂犬病を
疑われる野良犬のように。
 夢見て、それを地球への侵略という形でしか存在させられなかった
にせよ、主人公は夢の勝利を宣言して、捕えられる。


     (J・G・バラード/柳下毅一郎 監修『J・G・バラード短編全集2』
     東京創元社 2017初 帯 J)

(1)『J・G・バラード短編全集2』
(2)『J・G・バラード短編全集2』
(3)『J・G・バラード短編全集2』





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by byogakudo | 2017-10-01 22:20 | 読書ノート | Comments(0)


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