猫額洞の日々

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2018年 01月 17日

ミシェル・ウエルベック/野崎歓 訳『地図と領土』読了

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 ジェド・マルタンというアーティストの作品と、その一生がメインに
描かれる。時代設定は21世紀前半に始まる。場所はフランス(パリと
田舎)がメイン。
 
 ジェドの作品の描写だけでなく、現代のアートシーンの商業的側面が
詳しく描かれ、また実在の画家や作家を、自在に変形させつつ登場させ、
臨場感を与える。
 作者、ミシェル・ウエルベック当人まで登場して、しかも惨殺される。
メタフィクショナルな手法とはいえ、じゃあ、誰がこの小説を書いたのか。
 "小説"だから、なんでもありだ。フィリップ・ソレルスは、この小説中
では、すでに死んだことになっている。
 事実と虚構とがミックスされる。まるで山田風太郎の明治ものみたいに。
 
 ジェドは写真と絵画制作とを往復する。どんな作品なのか、目の前に在る
かのように具体的に記述される。ヨーロッパ絵画に於けるリアリズム描写や、
写真が最初に置かれた立場を思い出し、この小説は言葉でのリアリズム描写
がどこまで可能かを試みるものか、とも感じた。

 もしかして、フランス自然主義小説の流れに属するのだろうか。ゾラも
バルザックも読んでないで、大それたことをぬかすが。

 ジェド・マルタンはアーティスト、その父、ジャン=ピエールはリゾート
施設の請負業で財を成す。登場人物の属性は、彼らの職業とその付帯事項
として描かれる。職業的側面が描かれることによって、小説世界は社会性を
帯びる。ジェドは絵画では、何らかの職業従事者が仕事をしている場面を描く。

 社会の中でのアーティスト、社会の中での建設業、社会の中での小説家...、
資本主義社会の中での、人々と仕事(職業/労働/作業)の関わり、農工業の
生産物についての考察。

 ジェドが最初に有名になった写真展のタイトルが、
<「地図は領土よりも興味深い」>(p81 『1☆V』)。
 同じ地域の衛星写真と、ミシュラン地図の拡大写真の並列展示だ。いかす。
シニフィアンとシニフィエ・小説かと早とちりしそう。

 アーティストの一生を描きながら、父と息子の物語(母親をジェドが幼いころ
自殺したことにして、物語から取り除く)を語り、フランスという国家の変遷を
述べる。
 ジェドの最後の作品は、死の勝利だ。人類が死に絶え、人々が作り出したもの
は崩壊し、廃墟を風が吹き抜ける。メメント・モリ。

 作者自身が「私はシャルリ」のひとでなければ、スキャンダリストぶりっこ(?)
でなければ、いいのに。


     (ミシェル・ウエルベック/野崎歓 訳『地図と領土』
     ちくま文庫 2016年2刷 帯 J)


 阪神・淡路大震災、1995年1月17日。
 東北地方太平洋沖地震、2011年3月11日。
 それでも日本は原発を動かし続け、増やし続ける。





呪 亜屁沈臓/呪 汚池腐裏子/呪 共謀罪=ネオ治安維持法/呪 吐爛腐・夷蛮禍/

 安保関連法(こと戦争法)の本会議投票行動(PDF)東京都の
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 「共謀罪」法 衆参両院議員の投票行動

 上記のPDF





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by byogakudo | 2018-01-17 21:57 | 読書ノート | Comments(2)
Commented by saheizi-inokori at 2018-01-17 23:02
思い出しました(少し)。
自分のブログを検索してみたら「野太いユーモア、実に面白かった」と書いてました^^。
Commented by byogakudo at 2018-01-17 23:14
わたしも思い出しました。saheizi-inokori氏のブログで
感想を読んで、本のタイトルが頭に残っていたのです。
ありがとうございます。


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