2018年 03月 14日
~3月9日より続く 2-3日前に読み終わって、すでにもう記憶が薄れそうになっている。 なんとか思い出してみよう。 小説ではイスラーム政党がフランスの政権に就き、フランス社会は 大した混乱も起きず、緩やかに穏やかにイスラーム化に順応していく。 たぶんウエルベックはイスラーム文明に無抵抗に従う、"或る凡庸な 知識人の肖像"を描くことで、フランス(延いてはヨーロッパ)の底流に 在る敗北感、絶望感を描こうとしたのじゃないかしら。 たぶんウエルベックは三島由紀夫ファンでもありそうで(?)、憂国 の念から、この小説を書いた部分もなくはないと感じる。と同時に、 読者にショックを与えるにはどうするかという技術面から、SF的な外挿 である、イスラーム支配のフランスという枠組みを考えついたのでは ないかしら。 だけどもしかし、日本語訳で小説を読んだ限りの感想としては、"或る 凡庸な知識人の肖像"どころか、"或るボンクラな知識人の肖像"としか 読めなかったのだ。 ユイスマンス研究家である主人公の視点で語られるが、彼の自意識と いったら、たとえば、イスラーム化にすぐに順応した知識人の同僚との 会話の合間合間に、 < ぼくの口調は完璧だった。興味と好奇心を抱いているがそれ以上 ではなく、好意的な中立性を持ちエレガントでもあった。 [略] ぼくは意図的な沈黙を保った。人をまっすぐに見つめながら故意に 黙っているという印象を与えると、人は、自分の言葉が咀嚼されている と感じ、より多弁になるものだ。どんな人も、自分の話を聞いてもらい たがっているのは、探偵なら誰でも知っている。調査員、作家、スパイ たちはみな、そのことを分かっているのだ。>(P71『2』) __はあ......。語り手は注意深く賢明だと、作者は伝えたいらしいが、 そう思ってるのは語り手と作者だけで、ただのボケじゃん。 同僚との会話は、前記は同僚の豪勢なブルジョア的住いで、次に趣味の いいキャフェで交わされる。 <彼はシャンパーニュを注文し、ぼくはレフビールの生で留めておいたが、 そのとき何かがぼくの中ではじけた。自分の繊細さと穏健さに嫌気がさし> (p92『2』) __自分で自分のことを"繊細"っていうの? 恥っずかしい。 『地図と領土』では才気の見せつけ方が上手だと思ったが、この第一作は、 ヘマだと思う。 早々とイスラームに改宗して大学トップの地位を得たり、大臣になったり する知識人による、自己弁明というか、必然性の解説は、「理屈と膏薬はどこ にでも付く」類いのレトリックであり、これもまた凡庸さ、いや、ボンクラさ の表出に他ならない。 疲れ果てたヨーロッパ精神の在りようを、イスラーム化/イスラーム下という ショッキングな次元に拡大して見せ、現在時の人々の意識と行動を表層的に 描いてみせようとしたようだが、 「ぼくちゃん、おうちに帰りたい。ご飯を作ってくれて、ぼくの目の前でだけ セクシーにふるまってくれる、ママでも愛人でもあるような女のひとと暮せる、 イスラームっていいじゃん」と結論するだけの小説に思われる。 表層描写に留まろうとする意識が強すぎて、ただのボンクラな精神の軌跡を 描いてしまったのだろうか? ヨーロッパ文明の衰頽というテーマは19世紀末からずっと続く、ヨーロッパの 自意識的潮流で、ウエルベックもまたその支流に在ると証明したかったのかも しれないけれど、水脈はかなり枯れているように思われる。 (ミシェル・ウエルベック/大塚桃 訳『服従』 河出文庫 2017初 J) (1)ミシェル・ウエルベック/大塚桃 訳『服従』 (2)ミシェル・ウエルベック/大塚桃 訳『服従』 呪 亜屁沈臓/呪 汚池腐裏子/呪 共謀罪=ネオ治安維持法/呪 吐爛腐・夷蛮禍/ 安保関連法(こと戦争法)の本会議投票行動(PDF)+東京都の 安保関連法(戦争法)に賛成した議員名 共謀罪強行成立記念! 安倍政権の暴挙を忘れないために振り返る 「共謀罪トンデモ答弁・暴言録」 【票を入れるな危険】日本会議所属の都議候補一覧 小池百合子氏 日本会議“本流”から外れた愛国者 「共謀罪」法 衆参両院議員の投票行動 上記のPDF
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by byogakudo
| 2018-03-14 21:53
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