猫額洞の日々

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2018年 05月 13日

(3)ジョン・ファウルズ/小笠原豊樹 訳『魔術師 上』『魔術師 下』読了

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~5月10日より続く

 ジョン・ファウルズは、怒れる若者たちの一員とは扱われ
ないだろうが、小説全体の基調にある、ミドルクラス的なる
ものへの憤り、イギリス的良識とされる、殆ど本能に近い自己
抑制への苛立ちは、彼らと共通するのではないかしら。
 ビートニクな苛立ちを感じたのだけれど。

 どんな小説でもすぐジャンル分けして、パターン認識しようと
する悪い癖がある。それに従えば、この小説は"野心作"という
ジャンル(!?)ではないか。多層をカヴァしようとする記述が、
ともすれば構成のごたつきに感じられて、もっとすっきりした
書き方が可能ではないかと思い、いや、刈り込んでしまっては
豊穣性を喪う、と反省する。

 アンチヒーローによる教養小説。『感情教育』の主人公が
『美徳の不幸』の世界に引きずり込まれたような。

 謎めいた過去をもつ大金持ちのモーリス・コンヒスに率いられる
"演劇"集団(あるいは秘密結社)は、主人公をトリッキーな演出、
演技で翻弄する。
 『テンペスト』が全体の大きな下敷きであり、ギリシャ神話や
ギリシャ悲劇の一場面が演じられる小説を説明するのに、オレオレ
詐欺を例に引くのは失礼かもしれないが、小説であれ演劇であれ、
フィクションという詐術の説明には簡便だ。

 生活するとは、リアリティがある生を生きること、とされるだろう
が、ヒトは孤立しては存在しない。他者との関係性の中で生きている。
 生きることは日々、瞬間瞬間、期待された役柄を演じることでも
ある。人格に反した"演技"を長く続けることは不可能だが、ヒトは
相対する他者の希望を無意識に斟酌・反映して行動する。
 リアリティは自ずと、想像力というフィクショナルな要素を含む。

 オレオレ詐欺は、この無意識性を利用して成立する。声しか存在しない
電話という演劇空間で、受話器を取った被害者は、プロンプタ兼演技者が
設定した舞台に引きずり込まれ、半信半疑でいながら、それでも相手に
嫌われないよう、自分に望まれた役柄にふさわしく行動する。犯人たちは
被害者自らが参加するように仕向ける。
 詐術とは、小説であれ演劇であれ手品であれオレオレ詐欺であれ、観客
(読者)を巻きこんで成立する世界だ。

 語ることは騙ること。語り手/騙り手によって、ひとつの出来事は多層に
記述される。
 ファウルズは『魔術師』をアナログな手法で語り/騙り、彼に影響された
プリーストは『奇術師」と『双生児』をデジタルに語った/騙った、かの
ように思われる。ずいぶんと大まかな言い方だが。

 「待合室に気をつけろ」の意味は、最終的に悲しみに包まれて現れる。

 ヨーロッパ大陸の辺境にあるイギリス。古代ギリシャ文明に憧れる
イギリス人から見た、ヨーロッパの複雑さ。
 オカルティズム(や共産主義やアナーキズム)は、キリスト教世界を
相対化する、もうひとつのシステムなのかしら。
 わたしに知識があれば、もっと楽しめただろうに。


     (ジョン・ファウルズ/小笠原豊樹 訳『魔術師 上』
     ジョン・ファウルズ/小笠原豊樹 訳『魔術師 下』
     河出書房新社 1979初 帯 VJ)


(1)ジョン・ファウルズ/小笠原豊樹 訳『魔術師 上』
(2)ジョン・ファウルズ/小笠原豊樹 訳『魔術師 上』~『魔術師 下』へ
(3)ジョン・ファウルズ/小笠原豊樹 訳『魔術師 上』『魔術師 下』





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 上記のPDF





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by byogakudo | 2018-05-13 21:50 | 読書ノート | Comments(0)


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