猫額洞の日々

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2018年 05月 22日

アントニイ・バークリー/真野明裕 訳『ピカデリーの殺人』読了

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 ミステリ中の人間関係で、老いてわがままで自己主張の強い
寡婦の伯母と暮らす、気弱な甥(中年・独身)というパターン
があるのではないかしら。
 といっても、『伯母殺人事件』と、ミステリではなく怪談で、
かつ血縁でもない『シートンのおばさん』と、『ピカデリーの
殺人』しか例として思いつかないのだけれど。

 独身の姪と鰥夫の伯父/叔父の同居では近親相姦がほのめかされ
そうだし、寡婦の母と中年になろうとする独身の息子では、その
まま『サイコ』に移行する。子宮内的密室性が強すぎる。

 『ピカデリーの殺人』で名探偵ぶりを見せるチタウィック氏は、
伯母の専横にふりまわされる典型的な弱者タイプの甥である。
 原作は1930年刊行だが、それにしても、伯母の偏見のせいで
クラブの会員になれず、家に電話が付けられない。ロンドン西部、
チジックの邸から街なかに出てきたのも、伯母に代わってデパート
でカーテン生地見本の入手という仕事があるからだ。
 三人の姉たちが結婚するまで代々やっていた役割
<無給のお相手役兼下働き兼当たられ役>(p72)を、末弟の彼が
独身故に引き継いだのである。

 貴族ではないが旧家・名家のチタウィック家は、地所が狭まった
とはいえ木立に囲まれ、(1930年代当時の)郊外住宅の密集ぶりを
遮断し、電車の音さえ聞こえない。
 十分にお金持ちなのに、

<(肉屋に一ポンド半ペニーの値で売るため、新聞を全部大切にしまって
 おくのが、ミス・チタウィックのささやかな倹約法の一つで、毎月晦日
 (みそか)にはチジック・ハイ・ストリートまで売りにいくため二頭立て
 馬車での厳(おごそ)かな巡幸が行なわれる。毎月晦日にはたいていチタ
 ウィック氏はまったくどうしようもない頭痛を起こすか、さもなければ 
 どこかほかでよんどころのない約束があったりするのである)。>(p102)

 そんな敬老精神に富む、従順でおとなしいチタウィック氏が、偶然に殺人
事件を目撃する。警察側の証人である。
 しかし、加害者である貴族の一家から証言を曲げてくれとは言わないが、
目撃情報を再確認してくれと懇願される。彼らの熱意を受け、チタウィック
氏は自分が目撃したと思った事柄や人々を、もう一度見直すことにする。
 伯母上は貴族にヨワい。親しくなった彼らを家に招いたことで、氏の存在
は一気に向上した。捜査に必要なので電話が取りつけられ、昼食に帰らない
なぞという大技も可能になり、伯母の独裁下にあった甥は、自分の私的領域
を確保するようになった。

 ひとはいくつになっても成長可能である。穏和な中年男・チタウィック氏も
しかり。
 甥が伯母から独立して行く教養小説として読んだので、ミステリとして冗長
だの何だのという問題は、わたしにはまったくない。


     (アントニイ・バークリー/真野明裕 訳『ピカデリーの殺人』
     創元推理文庫 1997再 J)


追記:
 久しぶりに封筒にノートする場面を発見。

<数週間分のページを大わらわでぱらぱらめくり返して、チタウィック氏は
 目あてのものを見つけた。ポケットから使用ずみの封筒をつかみ出し、次
 のようにメモした__>(p270)





呪 亜屁沈臓/呪 汚池腐裏子/呪 共謀罪=ネオ治安維持法/呪 吐爛腐・夷蛮禍/

 安保関連法(こと戦争法)の本会議投票行動(PDF)東京都の
安保関連法(戦争法)に賛成した議員名


 共謀罪強行成立記念! 安倍政権の暴挙を忘れないために振り返る
「共謀罪トンデモ答弁・暴言録」


 【票を入れるな危険】日本会議所属の都議候補一覧

 小池百合子氏 日本会議“本流”から外れた愛国者

 「共謀罪」法 衆参両院議員の投票行動

 上記のPDF





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by byogakudo | 2018-05-22 22:29 | 読書ノート | Comments(0)


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