猫額洞の日々

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2018年 09月 20日

佐多稲子『月の宴』読了

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 いちばん面白いと思ったのは、『「たけくらべ」解釈へのひとつの
疑問』と『「たけくらべ」解釈のその後』なのだが、大変困ったこと
に、わたしは樋口一葉を/も読んだことがない(!)、日本文学にも
疎い奴なのだ。
 
 そういう輩が何かいうなんて破廉恥極まりない振舞いだけれど、
今から書こうとするのは、佐多稲子がどう考えているかの紹介と
それに対する感想なので、そのように了解していただきたい。

 将来は華魁になることを予定されている、気が強い少女が、或る
ときを境に、急に気がふさぎ温順(おとな)しくなった理由を、大抵、
初潮が来たせいだとされてきたが、佐多稲子はずっと、処女を失った
からだと解釈してきた。

 その理由を佐多稲子は、
<「だってその日、[注:ヒロイン・美登利の]母親は風呂場で湯かげん
 をみているもの」>(p162『「たけくらべ」解釈のその後』)
と、応える。
<従来女は、月のさわりのとき、風呂には這入らなかった。>
(p163『「たけくらべ」解釈のその後』)
 初潮だったら、お赤飯を炊いて祝うが、そんなシーンを一葉は書いて
いない。

 また、佐多稲子は、美登利の変わりようが、姉・大巻がいる廓を訪ねた
あとであることを記す。

<大門の中で、[略]密かに高価な「初店」が美登利の身に行われた、 
 と読取るのである。
 [略]
 美登利の変わりようを初潮と見るのは、彼女がまだ店を張る華魁に
 なっていない、ということが根拠になっているのだろう。だが、女の
 身を商いにする店の奥では、どんなことも行われ得ると私は聞いた
 ことがある。初店という売り言葉が如何に嘘かということも。初店と
 して店に並ぶ以前に、店の奥でその初店が何度も行われると聞いた。>
(p155『「たけくらべ」解釈へのひとつの疑問』)

__これも、そうだろうなあと納得できる。華魁・候補生を稼ぎのよい
華魁にするまでには費用がかかる。候補生であっても、「初店」ならば
希少価値のみで高く売れる。そんなチャンスを、楼主が見逃す訳がない。 
 廓は、装飾と想像力とで何重にも覆われた、生きている肉の市場だ。

 「初店」説を補強するものとして、佐多稲子は美登利の母親の描写を
引く。

<「すべて昨日の美登利の身に覚えなかりし思ひをまうけて物の
 恥かしさ言ふばかりなく」という状態に美登利がいるときのその
 母親のことである。「母親怪しき笑顔をして少し経てば兪(なほ)
 りませう、[略]」
 と美登利の「小座敷に蒲団抱巻持出でゝ、帯と上着を脱ぎ捨てし
 ばかり、うつ伏し臥して物をも言はず」というのをいささかも案じ
 たり察しやったりしていない。これは娘を売って大巻という華魁の
 全盛にあずかる境遇の、狎らされた人生態度である。
 [略]
 私は樋口一葉がこの母親を描いたということに、一葉の作家としての
 視線の鋭さを感じ、このことによって一葉の文学は近代文学である、
 とおもうのである。>(p157『「たけくらべ」解釈へのひとつの疑問』)

 この鑑賞の前には、
< 美登利の急に恥じらいがちにおとなしくなるのが、初潮ぐらいである
 のなら、先に云うように「たけくらべ」は美しい少女小説である。>
 長谷川時雨が「源氏物語」との関連性を例にとって、
<少女の紫が源氏との初夜あと御衣にまとわれて臥している>
箇所を引きながら、
<何故それを、「初潮が来て、女になった日だったと解釈してよい」
 と後退されたのであろうか。
 [略]
 美登利を最後まで美しい生娘にしておきたい、という一般の傾向でも
 あったのであろうか。しかしそれでは樋口一葉の浮き世、あるいは
 「憂き世」を観じた視線は見出せないことにならないだろうか。>
(p156『「たけくらべ」解釈へのひとつの疑問』)

 説得力あるなあと『たけくらべ』未読者が言っても、しょうがないが。

 
     (佐多稲子『月の宴』 講談社文芸文庫 1991初 J)





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by byogakudo | 2018-09-20 16:30 | 読書ノート | Comments(0)


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