猫額洞の日々

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2018年 11月 06日

吉村昭『歴史の影絵』読了

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 中公文庫、1984年の再版だが、あの時代の文庫本は、こんなに
字が小さかったのか。たとえば、たまたま手元に積んである一冊、
小泉喜美子『弁護側の証人』(集英社文庫 2009年5刷 J)の紙面と
比べてみると、後者は一文字が3ミリ画はあるが、前者は2ミリ画。

 たった1ミリが、大きなちがいだ。天地左右の余白もちがい、一行の
文字数がちがう。近年の紙の本は、読書人口の偏りに合わせて(たぶん)、
文字を拡大、余白ゆったり、字組ゆっくりになっているのだろう。

 吉村昭が歴史小説を書くための資料集めで得た話をまとめたエッセイ集。
中央公論社の雑誌「歴史と人物」に1980年1月から1年間、連載。連載時
のタイトルは『歴史を歩く』。
 1981年2月、中央公論社から単行本で出すときに作品配列を換え、ほぼ
時代順にしたと、文庫版『あとがき』にある。単行本をそのまま文庫版に
した、ということだろう。

 最後の三篇が、日本の軍隊の駄目さがよく分かり、その意味で興味深い。
軍隊の駄目さというより、戦略なしに戦争を始めてしまう日本国もしくは
日本人の宿痾というべきものに、絶望的になるのだけれど。

 『軍用機と牛馬』では、零戦を飛行場まで運ぶのに牛車が使われたという。
トラック輸送もやったけれど、名古屋の工場から各務原飛行場までの道が
悪くて、薄い軽合金製の機体に傷がつく。馬車で運んだこともあるが、馬が
暴走したのと耐久力がないので、時速2キロと遅いけれど、確実な牛車に
なったのだと。

 牛車による輸送の実態も詳細に記録される。
 一機を運ぶのに、二台の牛車、零戦の機体をバラして運ぶのだ。牛車・
一台に、挽子1名と仲仕2名がつく。
 交通量や機密保持のために日没後に出発する。途中にアメリカ領事館が
あるので、夜間とはいえ警戒しながら通る。

< 道が直角に曲っている個所では、長い機体がつかえて曲れない。その
 ため仲仕の指揮者が、部下に車台を持ち上げさせて方向転換をさせる。
 また、電線にひっかかる所もあって、その地点にくると竿で電線を押し
 上げて車をくぐらせた。深夜のことなので附近の人の眠りを破らぬように、
 提灯をふって合図しながらひっそりとそれらの作業をおこなったという。>
(p124)

 やっと小牧の町はずれ。ここで休憩する。牛は口から泡をふくほど、疲れ
果てている。夜が明けても昼間は牛を休ませる。

<夕方4時頃に出発し、犬山街道をのろのろと進んだ。各務原飛行場に到着
 するのは午後9時頃で、牛は疲労しているのでトラックに乗せて帰し、
 [注:この話をしてくれた]田村氏は挽子たちと電車で名古屋に戻った。
 つまり、48キロの道に24時間[注・漢数字は洋数字に変換]を要したので
 ある。>(p125)

< 「なぜ、道路を直すことをしなかったのでしょう」
  私の質問に、田村氏は、
  「お金がかかるからではなかったんでしょうかね」
 と言って、頭をかしげた。>(p126) 

 こまやかで丁寧な創意工夫と実践、その前にしっかりした判断だろうが
__引きで見る姿勢があれば、馬鹿な戦争に突入しないで戦争回避策も
考えられたのではないかと、やっぱり文句をいいたくなる。

 負けて占領されたからしかたない面もあるけれど、戦争犯罪者を日本人が
裁かなかったこと、戦後体制への移行を自ら行う部分が少なかったこと、
これらがハンディキャップとして意識されないうちに、朝鮮戦争という隣国
の不幸を契機に戦後復興してしまったツケが、たとえば、原発事故の責任を
問われた東電トップたちの無責任な弁明に現れる。


     (吉村昭『歴史の影絵』 中公文庫 1984再 J)





滅亡 亜屁沈臓/滅亡 汚池腐裏子/呪 共謀罪=ネオ治安維持法/滅亡 吐爛腐・
夷蛮禍/

 安保関連法(こと戦争法)の本会議投票行動(PDF)東京都の
安保関連法(戦争法)に賛成した議員名


 共謀罪強行成立記念! 安倍政権の暴挙を忘れないために振り返る
「共謀罪トンデモ答弁・暴言録」


 【票を入れるな危険】日本会議所属の都議候補一覧

 小池百合子氏 日本会議“本流”から外れた愛国者

 「共謀罪」法 衆参両院議員の投票行動

 上記のPDF





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by byogakudo | 2018-11-06 21:56 | 読書ノート | Comments(2)
Commented by saheizi-inokori at 2018-11-06 22:18
白内障手術の結果裸眼で読めるようになりましたが、昔の文庫はちょっと大変です。
ハズキルーペなんて使いたくないなあ。
Commented by byogakudo at 2018-11-06 22:42
ハズキルーペも戦犯・噴飯ものですもの。


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