猫額洞の日々

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2018年 11月 29日

(3)J・G・バラード/柳下毅一郎 監修『J・G・バラード短編全集5』読了

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~11月20日より続く

 最終巻、第5巻は、1977年の増田まもる 訳『交戦圏』から
1996年の浅倉久志 訳『死の墜落』まで、24篇収録。
 もちろんバラードの短編集なのだが、徐々にバラードらしさが
薄まってゆくような、悪くないのだけれど、一種、もどかしさを
覚えるような。
 つい、きんきらした、けばけばしいタッチのバラードを求めて
しまうのがいけないのだろう。1977年というと長篇では『ハイ・
ライズ』が1975年、『夢幻会社』が1979年。他は__、後年の
バラードをちゃんと読んでないなあ。

 ポスト宇宙時代を描く、柳下毅一郎 訳の『太陽からの知らせ』と
『宇宙時代の記憶』、村上博基 訳『近未来の神話』。1981年から
82年の作品だ。
 時間と空間とは、じつはひとつの事象を異なる局面から見た場合の
名づけに過ぎないのではないかと思いついたりするが、何か、文章が
遅い感じがする。むかし、もっと速くなかったかしら? たんに、この
ゆるやかさに馴染めないのかもしれないが。

 なので__わあ、とうとう使ってしまった、接続詞"なので"__、
この巻でいちばん好きだったのが、中村融 訳『月の上を歩いた男』
(1985年)みたいな分身譚になる。

 リオデジャネイロに住むジャーナリストくずれの男が、ある日、キャフェ
で老人を見る。アメリカ人観光客に、あなたが宇宙飛行士かと聞かれて、
そうだと答え、記念撮影に応じて小銭を稼ぐ。
 老人、スクラントンは、アポロ計画に深く熱中して、自分もその一員
だったという妄想に取り憑かれている。
 最初は本物かと思われたが、ただの農薬散布機のパイロットだった
過去が暴露されてからは、むしろ観光地の名物、変人としての小さな
危うい名声を得て、それを糧に細々と生きる。職がない元ジャーナリスト
は、老人に共感し、ついには、彼の死後、二代目の"宇宙飛行士"を名乗って
生きるようになる。

 贋物の宇宙飛行士のさらに贋物。鏡の中で分身が増殖する。
 わたしが好きな要素で構成され、細かい点では、老人の住いがいい。

< まもなくルクソール・シネマの裏にある、スクラントンの質素な部屋
 に着いた。この小さな映画館は、コパカバーナ・アヴェニューのはずれ
 に位置し、むかしは流行っていたらしい。以前は物置だったふた部屋と、
 映写室の真上にあるオフィスがアパートメントとして貸しだされており、
 じめじめした非常階段を登ってそこにたどり着いた。>(p258上段)

 ベッドと洗面台でいっぱいになる狭さ。寝台に置かれた枕にはピロー
ケースではなく、タオルですらなく、悪臭を放つ粘液がしみついた新聞紙
が巻きつけてある。世紀末小説か!

 この短篇で(も)、老人スクラントンが病いのせいで、キャフェから戻る
のに時間がかかる。
< ルクソール・シネマまでの二、三百ヤードを踏破するのに三十分
 かかった。しかし、時間はすでに伸び縮みする次元となりつつあり>
(p261下段)
__他の小説にも、時間が伸びることで空間も拡大する事情が記される
けれど、身も蓋もないことをいうと、これは老人が足が遅くなってなかなか
目的地に着かない事情ではないかしら。


     (J・G・バラード/柳下毅一郎 監修『J・G・バラード短編全集5
      近未来の神話』 東京創元社 2018初 帯 J)

(1)J・G・バラード/柳下毅一郎 監修『J・G・バラード短編全集5』
(2)J・G・バラード/柳下毅一郎 監修『J・G・バラード短編全集5』
(3)J・G・バラード/柳下毅一郎 監修『J・G・バラード短編全集5』





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 上記のPDF





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by byogakudo | 2018-11-29 21:45 | 読書ノート | Comments(0)


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