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猫額洞の日々

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2006年 02月 23日

「黒死館殺人事件」vs「錦絵殺人事件」

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 「黒死館殺人事件」は解るが、「錦絵殺人事件」って?と思われることで
あろう。こちらは島田一男の探偵小説で、春陽文庫に入っている。

 昨日付けに「たわごとの庭」 a 氏の読後感が記されているが、はぼ同感です。
(決して「ドグラ・マグラ」で口直ししようとは思わないけれど)。

 ただ、後年「錦絵殺人事件」を読んだことで、わたしは「黒死館」の文体の
必然性が理解できたような気がする。あれは日本の風土にゴシック趣味の館を
建設するために 必要になったネチっこい文体、日本の洋画的・油絵の具 厚塗り
文体ではないだろうか?

 「錦絵殺人事件」にも こちらは和風であるが大邸宅が出てくる。邸宅というより
天守閣付きの むしろお城である。登場人物の口を借りて、あれこれ様式の説明が
される。
 書画骨董の類いも凝っていて、三幅の錦絵はプレ・ラファエライトの画家・
ワッツの「希望」「愛と人生」「マンモン(黄金神)」を翻案した代物だとか、
他にも美術解剖だのオカルティズムだの、いろいろ蘊蓄が披露される。その
語り口の平べったいこと、退屈なこと、読みながら腹が立つくらいだったが、
その時 忽然と「黒死館」が解った。必然性が理解できた。

 「錦絵」も館や美術品をたんにトリックと効果のために用いるのでなく、物語の
必然性に基づく使い方があった筈であるのだが、残念ながら小説の骨格性に何ら
関わっていない。

 と ようやく「黒死館」理解に至ったところで、再読してみようかという体力は
すでに失われていたのだが それ以来、あまり小栗虫太郎の悪口は言わなくなった。
 でも70年代に小栗や夢野久作たちに使われたキャッチフレーズ_「異端の復権」
という言葉の鬱陶しかったこと。あのコピーライトのせいで、当時は読む気に
なれず、やっと80年代も半ばを過ぎてから手に取ったのだ。どうしてくれよう?

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by byogakudo | 2006-02-23 15:57 | 読書ノート | Comments(0)


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