2019年 07月 23日
< 三島由紀夫の死は、ぼくにいくつかの聖霊のようなものをもたら した。神道で祀られている三島が、キリスト教の、人に宿り精神的な 活動の助けとなるものを、与えてくれるというのも、すこし変な感じが するが、それも三島らしいといえるかもしれない。>(p8)と、始まる。 椎根和(しいね・やまと)は雑誌「平凡パンチ」で、三島由紀夫を担当 する編集者だった。 築地本願寺の本葬のときには<意識的に出席しなかった>(p8)が、 一年忌には出席する。 <場所は、皇居前のパレスホテルの宴会場。これが神社のような ところでの忌祭だったら、また欠席しただろう。 [略] 当時、創刊されたばかりのファッション雑誌にいて、ビートルズに 代表されるロンドンポップファッションの担当だった。この一年忌の 時も、ロンドン取材から帰ってきたばかりで、髪型、衣裳、靴、アクセ サリーまでロンドン最新ファッションで武装していた。 [略] 映画「二〇〇一年宇宙の旅」のヘアを担当したレオナルドという美容院 で、ジミ・ヘンドリックスと同じエレキヘアにしてもらった。[略] もともと量の多かった髪は、サッカーボールぐらいの大きさにふくらんだ。 服は茶色の特別注文のチェスターコート。下には、タイダイTシャツに紫色 のスカーフ。カカトが九センチもある赤い皮製のロンドンブーツ。 一年忌に、このファッションで出席すると、一人だけ浮くだろう、 窮地におちいるだろうと予想したが、三島だって生前、英国の戦後最初 の若者ファッションのモッズ族スタイルできめた写真を残しているのだから、 泉界の三島に供養になるだろうという計算もあった。 そんな恰好のほうが、他の出席者と三島の思い出を語らなくてすむ だろう...。 予想通り、会場は黒い衣裳の人ばかりであった。ぼくだけが完全に無視 され、たちまち孤立した[略]。 [略] ふと視線を会場の隅にやると、一人ポッンと所在なげに椅子に腰をかけた 年配の女性がいた。喪服ではなかった。地味な地味な和服だった。明治の 文豪の長女、森茉莉さんだった。茉莉さんのまわりだけ、明治時代の大きな 屋敷の納戸の内のような空気があった。茉莉さんは、大正時代に写真にとら れた巫女のような軽さをただよわせていた。 三島から派遣された天使のように見えた。ぼくは何度か茉莉さんを取材した ことがあった。はじめての取材の時、茉莉さんは、横浜のホテルニューグランド の大食堂で食事をしながらなら、インタビューを受けてもいいといった。もち ろん、椎根がハイヤーでむかえに行き、下北沢の彼女のアパートまで送りとど けるという条件もあった。 なんと素敵なわがままを、おっしゃるヒトだろうと、すぐその条件をのんだ。 その条件の言い方が、秀れた漫才師の、秀逸なつっこみにも聞こえたので、 茉莉さんは漫才をやっても、生活できるのではと、ひらめいたことがあった。 茉莉さんも孤立していると察しられた。ぼくは茉莉さんのそばを離れないと 決心した。会話がはずむわけではなかったが、居心地はよかった。ぼくの 孤立感はどこかへ消えた。 この会場で、ヘンな二人組になってしまいましたね、と言うと、彼女も同意 するようなゼスチュアをした。彼女はぼくの場違いなファッションを咎める ような視線を決してしなかった。ぼくは、漫才師のコンビとして時をやり過ごし ましょう、と言った。彼女から同意の言葉は聞かれなかったが、いつものように 放心したような顔つきと聞こえない言葉で、しかたがないわね、と賛意をあらわ してくれた。 他の出席者は、二人を批判のまなざしでチラチラと盗み見していた。茉莉さん は、会が終わるころまで、相方をつとめてくれた。三島の思い出話は、二人とも しなかった。 茉莉さんは、三島の死の直後、もっとも激越な文章を発表していた。醜悪な 日本人への怒りを投げつけた立派な行動だった、と。 ぼくは、森茉莉さんが、その場にいてくれたことを、三島からの最初の精霊の あらわれだと感じた。> (pp8-11『第一部 最新版 三島由紀夫と記憶と精霊たち』) (椎根和『完全版 平凡パンチの三島由紀夫』 発行:茉莉花社/発売:河出書房新社 2012初 帯 J) #人間やめますか、自公維に投票し続けますか? サイコパスども__ 滅亡 亜屁沈臓/滅亡 汚池腐裏子/呪 共謀罪=ネオ治安維持法/滅亡 吐爛腐・ 夷蛮禍/ 安保関連法(こと戦争法)の本会議投票行動(PDF)+東京都の 安保関連法(戦争法)に賛成した議員名 共謀罪強行成立記念! 安倍政権の暴挙を忘れないために振り返る 「共謀罪トンデモ答弁・暴言録」 【票を入れるな危険】日本会議所属の都議候補一覧 小池百合子氏 日本会議“本流”から外れた愛国者 「共謀罪」法 衆参両院議員の投票行動 上記のPDF
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| 2019-07-23 12:17
| 森茉莉
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