2021年 02月 15日
戦時下でのモダーン・アーキテクトの動きと、戦後、高度経済成長後の 近代建築保存運動の敗戦続きと、どちらを取りあげよう? <もともと近代建築の基本的な思想には機能主義・合理主義が強く貫入 していた。だからこそ"無用"な装飾やオーダーをとり付けた様式主義の 建築は、非近代として斥けられ、彼らの"分離"の対象、"過去建築圏"の ものとされたのである。また機能や合理の考え方の根底には、近代の 工業生産を前提とするものがあった。往々にしてこうした"近代化"は、 開発途上の国では"正義"として支持されるものであった。戦後の復興期 の日本でもまさにそうで、民主主義へのバラ色の期待とともに、機能 主義や合理主義は封建を克服する理論としてヒューマニズムそのものと 受け取られたのである。> (p196 『VI 新しい表現を求めて』の『4 戦争への傾斜』の『戦争への傾斜』) "近代"の合理主義思想はファシズムと共有する部分が多い。 建築学会主催、情報局後援による第16回建築展覧会行事の一つである 「大東亜建設記念営造計画」の趣旨は、 <「大東亜共栄圏確立ノ雄渾ナル意図ヲ表象スルニ足ル記念営造計画案ヲ求ム (所謂記念建造物ノ既成概念ニ捉ルル必要ナク、計画ノ規模、内容等ハ一切 応募者ノ自由トシ、大東亜造形文化ノ飛躍的昂揚ニ寄与スルニ足ルモノ)」> __という。 記念建造物の既成概念に捉われないで、規模もスタイルも建築家にお任せ、 フリーハンド、太っ腹なお施主・軍隊である。だが軍と協力するとは、結局、 明治の第一世代が <お国・国家への熱烈な忠誠心や帰属意識>(p177)にとらわれていたことと、 どう違っているのだろう。"近代主義"は個人を意識する思考なのに。 この計画の審査員は、情報局・第五部長・川面隆三を除くと、以下の13名__ <今井兼次・岸田日出刀・蔵田周忠・佐藤武夫・谷口吉郎・土浦亀城・星野昌一・ 堀口捨己・前川国男・村野藤吾・山田守・山脇巌・吉田鉄郎であった。常識的に いえば、すべて"近代建築家"たちである。戦争は一つの通過儀礼のようにして ただくぐり抜けられたのである。建築家たちからは一人のパージ(戦犯追放)も 出なかった。喜んでよいか、悲しむべきか、にわかに判断ができない。> (pp198-199 『VI 新しい表現を求めて』の『4 戦争への傾斜』の『戦争への傾斜』) __軍に協力しなければ建材は手に入らないが、こういう甘さ、弱さに無自覚であること は、モダーン・アーキテクトの戦後の大活躍にどんな影を落とすだろう。 最終章『VIII 終章・建築の現在__滅びを語らねばならぬ__』では、反対運動をした けれど解体された、東京銀行本店の例が語られる。 建築関係の法律は、建てるときのことばかり考えて制度設計され、壊すのを止めるため には使えないのだ。 村松貞次郎たちは、前面だけでも残して、背後に新しい高層ビルを建てる計画を出す。 ファサード部分+柱間一間分の奥行きを保存するやり方なら、背後の高層ビル工事中でも 地震に耐えられる、という案だ。 ところが、 <日本の建築法規および、さいきんとみに厳重になった「消防法」は、新しく建てる建物 だけの法律で、残すということにはまったく無縁のもの、否、残すことを否定する法律 だったのである。[略] 「建築基準法」では、古い建物の一部を残してそれに直接接続して新しい建物を建てる 場合、古い部分も一体として新築と見なし、その確認申請に構造計算書をつけねばなら ないのである。50年も昔の、鉄骨や鉄筋コンクリート構造技術がまだ確立していない 時代の建物の、その古い部分の構造計算がどうして出来るというのだろう。鉄骨や鉄筋 の正確な配置も不明、[略]鉄材が内部でどのていど錆びているかも不明、それで構造計算 が出来たとしたら、それはウソの計算書になる。[略]たとえ詳細な図面が保存されていた としても、専門家を動員して50年の歳月の傷みを調査し、それによって新しい構造計算 をすることなどは、もとより資金の皆無な手弁当のわれわれの手に余ることであった。 しかも相手[注:東京銀行側]はやる気がもともとない。「消防法」も、新築ということで あれば50年前の銀行建築のファサードをそのまま容認するはずがない。ここに消防の 進入窓を設けよ、あそこに避難口を設けよ、とせっかくのファサードを目茶苦茶にして しまうことは明らかだった。法律が建物を残すことを禁じているのである。いかにも成長 路線まっしぐらのこの国の法律だったと、私たちは今さらのように自嘲したのである。> (pp270-271 『VIII 終章・建築の現在』の『3 法律が壊させる』の『法律が壊させる』) 負ける場合の戦略なしに戦争に突入していく大日本帝国・軍隊。新築には意欲的だが、 建物を保存して風景を維持しようとする意思を欠く、前進一方の土建屋根性。covid-19に 打ち克った(具体的にどういう状況を意味しているのだろう?)証として、オリンピックを 開催・決行しようとする自公組。どれも同じ根っこをもつ。 日本は悪あがきして原爆や水爆を落とされた。スローな原爆である原発を止めないことで 自ら被害をつくり出した。これらの過去を無視して進もうとするのが、わからない。 (村松貞次郎『日本近代建築の歴史』 岩波現代文庫 2005初 帯 J) サイコパスども__呪・滅亡 酢加与死日照/滅亡 亜屁沈臓/滅亡 汚池腐裏子 /呪 共謀罪=ネオ治安維持法/滅亡 吐爛腐・夷蛮禍/ 落選:塩谷立/大塚拓/井上信治、以下日本学術会議のあり方を検討する自民党 プロジェクトチーム全員 ..... Ads by Yahoo! ........
by byogakudo
| 2021-02-15 20:20
| 読書ノート
|
Comments(2)
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saheizi-inokori at 2021-02-16 10:27
>しかも相手側にはやる気がない。
よくわかります。サラリーマン集団だものなあ。
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byogakudo at 2021-02-16 12:35
あとのほうで、
<古い建物を壊して新築したいという建築主の多くは、すでに"雇われ重役"になっている。[略]主張があった初代たちとうって変って、金を出して買うのは ただ新築ビルの容積であり、機能である。>(p275) という件りがありました。 |
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