<空気はかすかに甘くなってきた。あたしのアパートの玄関の壺にいけた
アネモネが深い青に、真紅に、ほころびはじめてんの。とってもきれいよ。
花瓣を上向けているアネモオヌの深い皿。咲いていることにもう倦きている
ような、物憂い薔薇色、黄色、ミルクを含んだ橙、濃紅。 _森茉莉
あたし、じつを言うと、森茉莉さんのこの文章が好きで、それでアネモネが
大好きになったようなものなの。あたしだって、いつもいつも清元や小唄
じゃなく、それから外国ミステリーばかりじゃなく、ちゃんとこういう本も
読むのよ。> (第三話 ダイイング・メッセージ 握りしめたオレンジの謎 より)
こういう70年代の若い新橋藝者を主人公にした 可憐な連作ミステリ集である。
小泉喜美子がクレイグ・ライス・タッチで、彼女の好きなミステリや歌舞伎や街に
対する意見を、箇所箇所で述べている。
<・・・さっぱりシマらないミステリーになるかもしれませんけれど、
その辺のところは御容赦を。だって、あたし、深刻ぶるミステリーって
大っきらいなんですもの・・・。> (第一話 ユーモア・ミステリー さらば
愛しきゲイシャよ より)
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