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猫額洞の日々

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2024年 06月 12日

(5)再開、ANNA KAVAN "MACHINES IN THE HEAD"、“THE BLACKOUT“

(5)再開、ANNA KAVAN \"MACHINES IN THE HEAD\"、“THE BLACKOUT“_e0030187_19290932.jpg























 "I AM LAZARUS"所収の"THE BLACKOUT"をかなり
きちんと読み終えた結論は、辞書を引くべしである。
 細かくいえば、辞書なしでざっと読み終えたら、あまり
よく分かってなかった箇所を集中的に辞書を引いて読み
直そうということ。そうしないと、文章が味わえないまま
に終わってしまう。もったいないじゃないか。

 (さらにいえば、わりと丁寧に読んだ後で得られた感想は、
じつは日本語訳で読んだとしても、もっと早く同じ感想にたどり
着いたのではないかという疑問を突きつけるのだが、せっかく
英文のまま読んだのだ、そこはあまり突かないでおこう...。)

 “THE BLACKOUT“は、第二次対戦中のイギリス軍に徴兵された
若い男が主人公。休暇中の記憶を失っている。
 ストーリーの始まりと終わりは、精神分析医に尋ねられている
場面だが、この箇所では時間がのろのろと進む。主人公は虚ろで、
気にかかるのは些細なことばかり。分析医のボロい灰色のズボンや
底が修理された粗革の靴。目を見て話したくないから、いきおい、
自分が横たわるカウチの足先方向に見えるものしか見ない。ほんとは
窓を開けて外を見たり、壁にかかっているカレンダーの絵を見たり
したいのだけど、起き上がって医師と直面しなければできない行為だ。
 
 ここで、辞書を引いてもなかった言葉が出てくる。"hospital tie"を
彼はしているのだが、これは何なのか? いまの病院なら、入院患者で
あることを示すヴィニルの腕輪を入院時に着けられるけれど、その類と
考えていいのかしら?
 洗い晒しで、赤から濃いピンクに変色したネクタイには天鵞絨みたいな
毛玉ができていて、触ると気持いい___という箇所を理解したのは、辞書で
pileを引いたときだ。それまでpile=積み重なりとしか考えられず、辞書に
パイル織とあるのを見て、やっと前後がつながった。原文は___

<The presence of the doctor prohibited him from doing these
things, so he looked down at his hospital tie and began fidgeting
with the loose ends of it. The tie had been washed so often that
it had faded from red to deep pink and the cotton fabric had a
curious dusty pile on it, almost like velvet, which communicated
an agreeable sensation to the tips of his fingers.>(p48)

___でも、日本語訳ではどうなってるのだろう?気になる。

 最初と最後の現在時はゆっくり進むが、間の回想部分は早回しだ。暗い
長いトンネルの先に、彼の過去はある。
 貧乏な家庭、アル中の父親は酔っ払って妻を殴る。少年時代のわずかな
喜びは若くてうつくしい叔母が訪ねて来てくれること。両親が死んだので、
彼は大好きな叔母と貧しいながらもすてきな家庭を手に入れる。
 叔母が病に倒れたが彼も成長して二人分の稼ぎができる。ところが戦争
が起こり、彼は他に身寄りのない病身の叔母を残して徴兵される...。
 ここで、彼が日本でいう、いわば無理心中をしたのが暗示される。そこ
だけは思い出したくないので、彼は最後に泣き崩れる___

< "It was like a blackout. A blackout. I can't remember," he kept on
hopelessly mumbling among the tears.>(p54)


     (ANNA KAVAN "MACHINES IN THE HEAD SELECTED STORIES"
     new york review books 2019)




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by byogakudo | 2024-06-12 22:38 | Anna Kavan | Comments(0)


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