2006年 06月 15日
素敵な短篇集だ! 超常現象を主題に、いとも軽々としたタッチで語って みせる。いい小説家なのに、なぜ一冊本で紹介されるのがこんなに遅れたのか、 その方が謎である。 広告代理店勤務のアート・ディレクター マックス・カーニイが趣味の 幽霊退治人(ゴースト・ブレイカー)になったのは、古書店主W.R.ペドウェイから オカルト本を買ったことに端を発するが、この古本屋にはオレンジ色の猫が飼われて いる。猫はたいてい椅子や合本の上で眠っていて、本にいたずらしたりしない。 作者本人も猫を飼っていると思われるのは、短篇「姿なき妨害者」の、ある幽霊 屋敷でのシーンである。 幽霊に怯え、毛を逆立ててベッドの下にもぐり込んだ茶色のぶち猫が、やがて <・・・ぶち猫はベッドの下から出てきてごろりと仰向けになり、垂れた毛布の端を 前足でひっかいた。>うちの猫もこれをやって、わたしたちから叱られる。 たぶん あくどくないのが、ウリを見つけ難いということで、日本での紹介を 遅らせた原因ではないかとも思うけれど、小味で爽やか、江戸前です。 (ロン・グーラート 浅倉久志訳 扶桑社ミステリー文庫 06初帯)
by byogakudo
| 2006-06-15 13:01
| 読書ノート
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