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猫額洞の日々

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2007年 03月 20日

interlude「目羅博士」

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 (写真はクリックすると拡大します。)

 「メグレと幽霊」(ジョルジュ・シムノン 河出文庫01初)を読み終えて
次のシムノンに行く前に、買取本にあった「不気味な話 1」(江戸川乱歩
河出文庫 96再)から「目羅博士」を再読。

 2月27日のブログに少し書いたけれど、再読してもやはり素敵だった。

 乱歩が上野動物園で出会った「哲学者ルンペン」が語る話という導入部も、
語る場所が不忍池を見下ろすあたり(ああ、宇野浩二「夢みる部屋」!)、
時刻は黄昏から月夜へ移り行く頃というところも、読者を物語に誘う。

 ルンペンは語る。
<・・・恐怖の谷は何も自然の峡谷ばかりではありませんよ。・・・丸の内に
 だって恐ろしい谷間があるのです。
  高いビルディングとビルディングのあいだにはさまっている細い道路。
 そこは ・・・文明の作った幽谷です。科学の作った谷底です。その谷底の
 道路から見た、両側の六階七階の殺風景なコンクリート建築は、・・・
 文字通り斧でたち割った、巨大な鼠色の裂け目にすぎません。・・・日も月も、
 一日のあいだにホンの数分間しか、まともには照らないのです。・・・
            ・・・ 
 ・・・二つのビルディングは、・・・峡谷のがわの背面だけは、どこから
 どこまで寸分違わぬ作りになっていたのです。>(p283-284)

 そして月明かりの夜になると、まるで鏡写しのような向かい側のビルから、
目羅博士の犯罪が行われる。眼科医・目羅博士の診療所の描写もすてき__
ガラス箱にはあらゆる種類の義眼が並び、眼科医なのに等身大の蝋人形や
骸骨が置かれている、オブジェ兼犯罪愛好家・目羅博士。(この場面を読むと
吉田健一の中公文庫版「怪奇な話」J写真を思い出す。)

 創元文庫「怪奇小説傑作集5」に入っているエーベルス「蜘蛛」が、たしか
ネタ本だったと思うが(いま手元にないので未確認)、東京が都会だった
30年代の空気が感じられるので、わたしはこちらが好き。

 メールトラブルはSが解消してくれたが、PC暴走の導入部ではないかと、まだ
疑心暗鬼している。

by byogakudo | 2007-03-20 14:42 | 読書ノート | Comments(0)


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